No100 丹 後 編(京都府宮津市由良〜伊根町津母)

今日の旅は、宮津市由良から同市日置まで約20kmの道。
朝は晴れていたけど、途中パラパラと雨が降る。
気温が低くウインドブレーカーを着て歩く。
今日からは、楽しみな「歴史ロマンの宝庫」と謳われる丹後半島をめぐる。

宮津街道と呼ばれる国道178号を行く。
栗田(くんだ)海岸では、旧街道に入り集落の中を歩む。
途中、北近畿タンゴ宮津線の栗田駅があり、その待合室で休憩することに。
駅前の広場には、1本の古木の桜が見事に咲いている。
それを眺めながら缶コーヒーを飲む。
無人駅の待合室には、「お助け傘」の看板をつけた傘立てがあった。
「使用後は元の位置又は最寄駅にお返しください」の添え書きが。
傘立てには、1本だけポツンと取り残されたように立っている。
そんな桜や傘等を写真に収め、無人のホームに出て、そこでもパチリ。
栗田駅から歩き始めて間もなく、左手に「住吉神社」の額を掲げた鳥居が眼に入る。
鳥居からは、真直ぐな参道が社殿まで続く。
その反対の右手は、栗田湾に視界が開けた広場。
そこにも、海に向かって鳥居が建っている。
カメラのファインダーからみると、厳かな一幅の絵のようだ。

再び国道178号に出て栗田トンネルを抜け宮津駅前に到る。

宮津駅の観光案内所で丹後半島のガイドマップ等を収集する。
今日の旅のお楽しみスポット「天橋立」には12時15分に着く。
天橋立の入口にある廻旋橋の袂で、食事処に入り昼食にする。
窓辺の席で、遊覧の水上ボートが行き交うのを眺めながらカツ丼を食べる。
天橋立は、海を二分する砂州で約8000本の松が茂っていると云う。
幅20〜170m、全長3.6kmで、その白砂青松の道をブラブラ歩いて行く。

約40分程で松林を抜けると、丹後一宮「籠(この)神社」があり参拝する。
その後、近くのケーブルカーで傘松公園(標高130m)に昇る。
ここからの眺めは絶景だ。
天橋立は、イザナギノ神が天に通う梯子が倒れて出来たと云う伝説がある。
ここで股の間から覗くと天地が逆にみえるそうで、それが伝説の由来なのか。
私の遥かむかし、高校の修学旅行でここに来て、股のぞきしたことを微かに想い出す。
しかし、その時も今回も、天と地がひっくり返っているようなしてないような?。

傘松公園でゆっくりして、今日の宿に着いたのは15時半頃になった。
日置集落の国道178号沿いにある民宿で直ぐ見つかる。
2階建ての民家造りで、1階は食事処になっている。
部屋や風呂などは小ぎれいで快適。
宿泊料金4500円は朝食込みで、夕食は別途料金で階下の食事処でという。
それで、夕食はアジフライ定食にして、熱燗1本を追加する。



翌日の朝食は、サンマ定食でこれもおいしかった。
宿を出る時から、雨がポツリポツリと降り出した。

その後も雨は降り続き、国道の道路情報を見て驚く。
伊根町蒲入から丹後町(現京丹後市)袖志の間は、崖崩れで全面通行止と出ている。
今日の宿は蒲入の手前になる津母と云うところなので、とにかく行ってみることにする。
丹後半島の海岸線を行く国道178号は、たしかに山側は急峻なところが多い。
宮津市域から伊根町に入って日出というところに、遊覧船乗り場があった。
乗船の待合室と土産店を兼ねる建物に入って休憩する。
ここは、伊根湾めぐりの遊覧船乗り場だった。
伊根湾には、約230軒の「舟屋」と呼ばれるむかしからの建物が、グルッと取り囲んでいるという。
その独特な景観は、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
丹後半島の旅で、私が最も楽しみにしてきたところだ。
ぜひ海から、その景観を確かめてみたいと思う。
見廻すと、雨のためか他に観光客はいなくて私一人だ。
これでは、数十人乗りのジエット遊覧船は出ないだろう。
そんなわたしの心内を察したかのように、店の人が私一人でも乗せてくれるという。
料金はどういう訳か、一人分の乗船料660円にプラス330円で良いという。

大喜びで船に飛び乗ったのは云うまでもない。
貸切状態の船は、小雨の中、ゆっくりと伊根湾を巡る。
波静かで穏やかな水面に浮かぶ舟屋の風景は、まさに幻想的だ。
夢中になって写真を撮り、アッと云う間に湾内周遊が終わってしまった。
遊覧船を降りて、今度は街道から舟屋巡りをする。
街道の景観は古くからある町屋の街並みだ。
ところどころで街道から舟屋が覗けて、引き込まれた小船が見えたりする。
また、家の洗濯干し場の脇に漁船が繋がれていたりもする。
まさに、観光パンフにある「日本でいちばん海に近い暮らし」がここにあった。
道の駅「舟屋の里公園」に着いたのは、ちょうど昼時だった。
高台に整備された公園内のレストランで、カツ定食を注文する。
ここからは、伊根湾全体を北から南に向かって一望する素晴らしい眺めだ。
伊根湾の入り口に、湾内を守るかのように小島がある。
湾内の水面が穏やかなのは、キッとこのお陰なのだろう。
伊根のまちを、海から、街道から、そして高台から眺められ大満足する。

道の駅からは、国道178号ではなく海沿いの旧道を行く。
雨の中、結構きつい道だけれど元気に歩く。
新井の千枚田や長く風雪に耐えてきた土壁の民家等が写真ゴコロをそそる。
さらにすこし脇道になるけれど、新井崎神社にも寄ってみる。
ここは全国にある「徐福伝説地」のひとつだ。

今から2200年程前、中国の秦の時代に徐福と云う人がいた。
徐福は秦の始皇帝の求めに応じ、不老不死の薬を探しに東方の海へ船出する。
しかし、若い男女3000人を率いる徐福の大船団は、そのまま帰らなかったという。
その船団は、東方にある島を目指したことから、その島は日本だったというのだ。
そうしたことから、徐福が上陸して住みついたと云う伝説が日本の各地にうまれた。

徐福はこの新井崎に住みつき、医療、漁労、農耕等の技術を教えて住民に慕われた。
そして死後、産土神(うぶすながみ)として新井崎神社に祀られていると云う。
新井崎神社は、岬の海を見下ろす高台で森の中にひっそりとあった。
雨の中ひとりで、小さな社殿の石段に腰を下ろし、そんな伝説を思い描いた。

雨ふりで、丹後半島の旧道の道はきつかった。
それでも交通量が少なく、車を気にしないで歩けるのは助かる。
今日の宿は、純和風温泉旅館で高級感溢れるたたずまいだ。
歩く旅人にとって、最も贅沢な宿。
玄関前に並べられた御一行様の看板に自分の名前がある。
それだけでも気恥ずかしいのに、ずぶ濡れの旅姿で広い玄関に入るのは気後れする。
海を見下ろす眺めの良い部屋に案内される。
何はともあれ、と先ずは温泉に浸かる。
肌がつるつるになりイイ湯だ。
夕食は、12品目の御品書が付いた海鮮フルコース。
スミイカの活きづくり等どれもおいしく、熱燗2本を追加。


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