No112 山 陰 編(萩市上五間町〜長門市油谷新別名)

今日はゴールデンウイークの5月4日。
一般の旅館や民宿は、平日以上に宿泊の予約が難しそうだ。
それで、ビジネスホテルを電話帳で探して予約できたのが、長門市正明市のホテル。
今日はそこまで27km程の旅になる。

萩市上五間町の朝も晴れた。
宿代を払って出発しようと玄関に下りる。
女将さんはビール代はサービスよ、と云って見送ってくれる。
お礼を言って玄関の上がり口に眼を向けると、飾り棚が日に照らされてハッとした。
急いでカメラを構えて写真におさめる。
この光景は、なぜか歩き始めてもずーと心に残った。
国道191号に出て橋本川を渡る時、萩のまちに向かって写真を撮る。
そして、いつかまたこのまちに来よう、と思った。

やがて山間の道になり、「大雨の時、これより8.7km通行止区間」の道路標識が眼に入る。
連続雨量150mm以上だそうで、今日は晴れていてよかったと安堵。
ここの山間集落も、黒と赤の屋根が混じり合う。
いまはまだ、のどかな風景に見えるが、ここでも「限界集落」の気懸りが。
この先10年後は、どうなるのだろうかと。
三隅町の宗頭交差点を過ぎてしばらく行くと食事処があった。
疲れてきた頃なので、昼少し前だけれど昼食にする。
ハンバーグ定食(600円)を食べる。

午後になると気温が上がり、コンビニでソフトクリームやスポーツドリンクを買う。
長門市の中心市街地に入る頃は、かなりへばっていた。
今日の宿に、電話で場所を尋ねながら着いた時はホッとした。
「○○グランドパレス」と大きな看板が立ち、どんな部屋に通されるかと期待した。
案内されたのは別棟のコテージホテルだった。
最近流行りと聞く、貸切り型のリゾートマンション「コンドミニアム」といったものか。
丁度隣の部屋には、子供を連れた家族が車でやってきた。
室内は山小屋風のウッデイな造りで、日用品は何でも揃っている。
少しがっかりしたけど、これはこれで悪くないと思いなおす。
夕食はできないというので、近くのコーポで弁当、ビール、牛乳等を買いホテルの部屋で食べる。
部屋に洗濯機が付いているので、気兼ねなく上下着、靴下等を洗濯する。
その後、家族や友人に毎日送る旅便りをメールすると、疲れが出て、返ってきたメールに返信する元気もなく寝てしまった。



次の朝、起きると少し身体が重かった。
それで今日の宿は、長門市油谷町辺りで探す。
行程は15km前後なので、早く宿についてできるだけ身体を休め様と思った。
見つかったのは、山陰本線人丸駅近くのホテル。
電話すると、チェックインは16時で素泊まりでよければ、という。
他に宿はなさそうなので、仕方なく予約することに。

疲れもあって心に余裕もなく、単調な旅だ。
そんな中で興味をひいたのは民家だった。
畑地の中に緑の山を背景にして、どっしりとした黒い民家は魅力的だ。
こうした伝統的な佇まいほど、土地の風土を感じさせてくれるものはない。
残念ながら今は全国どこも、洋風化した根なし草のデザイン民家が増えている。

そんなことを想いながら、ゆっくり歩く。
途中にコンビニがあり、度々、道中で置き忘れるビニール傘を買い直す。
休憩時に、旅の同志「バックパック」のポートレ―ト?を撮ったりする。

こんなのんびりとした足取りでも、宿に12時30分に着いた。
玄関で声をかけても、何の応答もない。
チェックインは16時なので、近くで食事したり喫茶店でコーヒーでも飲んで時間待ちすることに。
近くのJR人丸駅周辺で探したが、休業や廃業でどちらも見つからなかった。
来る途中にスーパーがあったので、宿の玄関前に荷物を置いてそこへ行く。
いなり弁当とお茶を買い、スーパー横のベンチで食べる。

スーパーから宿の玄関に戻っても、やはり人の気配はない。
玄関前にシートを敷いて腰を下ろし、旅ノートをつける。
それからJR人丸駅に行ってみる。
駅名の「人丸」は、柿本人麻呂のことに違いない。
島根県の石見地方から遠く離れた当地で、なぜ人丸なのか。
人丸駅ではその由縁は分からなかった。

旅の後で調べると、柿本人麻呂は九州から石見に向かう途中に、この地に滞在したといわれる。そして、
 向津具の奥の入り江のさざなみに
     海苔かく海士の袖は濡れつつ
の詩を残している。
人丸駅から1km程東に「八幡人丸神社」がある。

それはさておき、人丸駅は今年(2006年)4月1日から無人駅になってしまったという。
駅の管理は油谷町に委託され、ボランテイアらしい中高年の人が改札していた。
そして、できるだけ長距離切符は、この駅を通じて購入してほしい旨のビラが貼ってあった。
人丸駅内外の写真を撮ったり、待合室でメールを送信したりして、15時20分頃に宿の玄関に戻る。
宿の人が来ていて、荷物は中に入れてある。
直ぐに部屋に通して、風呂の用意もしてくれた。



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