No14 ひたち・みちのく編(福島県新地町〜宮城県塩竈市)

福島県から宮城県に入ると、山元海岸という長い砂浜の海岸線が続く。
みどりがかった紺碧の海と黒っぽい猛々しい巨大な雲が天空を埋めていた。
この浜辺を歩いていると、広大な空と海に包まれた自分はひどくちっぽけな感じがした。
しかし、なぜかそれは気持ちのいいものだった。

この辺りは人家が少なく、昼時になっても、コンビニはもちろん昼食にありつけそうな店はなかなか見つからなかった。
ようやくおばさんひとりで切り盛りしている小さな食事どころを見つけた。
メニューというほどのものもなく、ラーメンとおにぎり2個を注文した。
ラーメンはまずまずだったけれどおにぎりには驚いた。
食欲旺盛でまずどんなものでも食べられると自負する私だったけれど、このおにぎりだけは残してしまったのだ。
デジタルカメラの電池が切れて店のコンセントから充電させてもらったご恩で、苦笑してこらえるしかなかった。


宮城県の最初の宿は、「公共の宿 鳥の海荘」という。
着いてみると、今朝旅立ってきた松川浦に似た海がひろがっていた。
海水と淡水が混じり合う「汽水湖」だという。
そこには、渡り鳥など多くの鳥が集まるので「鳥の海」と呼ばれるそうだ。
周辺には沢山の新しい住宅が立っているので宿の人に尋ねると、ここは住みよいところで「東北の湘南」と呼ばれる人気地だそうだ。

次の朝は快晴で、鳥の海の向こうに白雪を冠した山々が目に飛び込んできた。
蔵王連山だという。
上記の写真のように、蔵王連山を眺めながら寝そべって釣り糸を垂れる姿は、曜日の感覚がなくなった旅人に「今日は日曜日」だと教えてくれた。

この旅は、出来るだけ海沿いをゆくことにしている。
ところが予定した名取市の海沿いの宿がどこもとれず、仙台市長町方面に迂回することになった。
鳥の海を発ってすぐに東北の大河「阿武隈川」を渡ると、広大な平地がひろがっていた。
春先でまだ作物は植えられていないが、ほとんど農地である。
ところどころ屋敷林に囲まれた農家が点在している。
どこ迄も続く平地の向こうには、やはり蔵王連山がどっしりと構えている。
道端でひとりぽつんと休んでいると、なんとも言えないいい気持になって、おもわず大の字になって寝転んでしまった。


東北の大都市仙台では、中心市街地から外れた長町という所に泊った。
そこから市の西側を抜けて、塩竈市に入った。
ここで泊まったビジネスホテルは、受付も自動化された最新のホテルだった。
ホテルの食堂は、夜一般の人も利用できる「スーパー居酒屋」を兼ねていた。
そして、全てオートサービス化された店だった。
これでは味気なく、疲れた身体を元気づけようと外食することにした。

塩竈市は、「日本一のマグロの水揚げ港」がある港町である。
そして、1平方キロ当たりの寿司店の数も日本一といわれる。
しかし、今までに泊った宿の食事には必ず刺身などの魚介類がついたので、今夜は寿司の気分にはならなかった。

やきとりの店を見つけて中をのぞいてみた。
けっこう客がいて、カウンターの端に席を得た。
地元の常連さんが多いようで、ご主人と客の間で陽気な会話がとびかっていた。
ご主人や客の地元訛りが強く、話しかけられてもよく分からないことが多かった。
けれど気分がよかった。
まずはビールで、焼き鳥におでん、それに地元の銘酒「浦霞」をコップ酒で仕上げた。


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