No146 山 陽 編(三原市城町〜福山市城見町)

三原市から福山市までは、35km前後で一日行程で行けなくもない。
しかし、途中の尾道は素通りする訳には行かなかった。
尾道は、35年も前の新婚旅行で来た想い出の地だ。
いつか必ず再訪したいと思っていた。
それで今日は、尾道までわずか11kmの短い旅。

この日も晴れて、比較的涼しくもある。
ホテルを出ると直ぐに国道2号に出る。
そしてその向こうは、三原港のフェリーターミナルだ。
JR三原駅からホテルへの道は、港に通じる道でもあったのだ。
だから歩道の舗装が、船の甲板をイメージする木造デッキなのか、と納得。

そんなことを考えながら歩むと、はやくも日差しが強くなる。
腕が焼けて、少しヒリヒリし出す。

山陽道の海沿いの道は、工場や漁港等が連なりエネルギッシュだ。
尾道市に入ったところの漁港は、布を張った屋根付きの小型漁船がビッシリ停泊している。
岸壁には、魚網やポリ箱等がごちゃごちゃ置かれ、東南アジアの漁港の雰囲気。
そんな光景を写真に収めながらも、山陽本線尾道駅前に着いたのは、まだ昼前だった。
そこから今日の予約した宿に電話して場所を尋ねる。
そのホテルは、駅から少し戻って、山陽本線沿いのところにあった。

まだ昼前で、フロントに荷物を預け、まちの散策に出かける。
観光案内所で観光パンフをもらう。
パンフのキャッチフレーズは、「何かを思い出すために、何かと出会うためにーI LOVEーおのみち」だそうだ。
それを楽しみに、古寺巡りコースと文学の小路を行く。
山の斜面に張り付いた古い寺や民家の間を歩む。
そして千光寺新道と呼ばれる石段を上がると、志賀直哉旧宅と云うのがあった。
そこで思い出したのは、新婚旅行で尾道を選んだことだ。
わたしは志賀直哉が、妻は林芙美子が住んだ町ということで興味が一致したからだった。
そんなことを思い出すと、この石段の道をふたりで歩いた様なかすかな記憶が浮かぶ。
さらに石段を上がって、文学の小路を通り展望台へ。
そこからの眺めは、文句なく素晴らしい。
眼下には尾道水道と呼ばれる狭い海峡が流れる。
それを挟んで、尾道のまちと対岸の向島の造船所や山なみ。
海峡の東の出口には、吊り橋構造の尾道大橋が二つ並ぶ。

再び千光寺新道に戻り、石段を下って街中に出る。
もっと何かを思い出せないかと、アーケードの商店街を行く。
記憶もほとんど薄れているけど、きっとまち自体も35年前とは大きく変わっているに違いない。
あの時泊った宿名も、電話帳で探したが見つからない。
お腹が空いてきて、センチメンタルジャーニーもそれ位にする。
昼時はとっくに過ぎて、駅近くのビルの2階にある食事処に入る。
迷わず「尾道ラーメン定食」と云うのを注文する。
麺は固めんの濃い醤油味のらーめんで、結構おいしかった。

夕食は、スーパーでにぎり寿司と野菜煮物セットそれに缶ビールを買い、ホテルの部屋でとる。



次の日も秋晴れの好い天気。
ホテルを出てJR尾道駅前に来ると、すでにまぶしいばかりの日射しだ。
国道2号を挟んで、駅前は広い芝生広場になっている。
反対の海辺は、フェリー乗り場等の港がある。
新婚旅行の時は、尾道から水中翼船で四国の今治に渡った。
その乗り場はこの辺りだったか、と考えながら海沿いの旧道を行く。
すると、ハッとする様な建物が目に入る。
あの時の旅館は、たしか町屋風の海辺に近い旅館だった気がする。
名前も違う旅館の建物だけれど、懐かしい気持ちでカメラに収める。
尾道渡船フェリー乗り場近くでコンビニを見つけ、日焼け止めクリームを買う。
尾道造船所のところにタンカーが接岸していて、その巨大さに驚く。
この地域はこうした造船所が多く、重厚長大型産業が今なお元気なことはうれしい。

午前11時を過ぎると気温も上がり疲労感が強くなる。
国道2号と時折り、旧山陽道が交差する。
その旧街道をのぞくと、強い陽射しの中で時間が止まっているかに見える。
昼時に、コンビニの駐車場のところで涼しい休憩場所を見つけた。
小さな倉庫があって、その前のコンクリートのタタキが、日陰で腰を下ろして休むのに格好の場所だ。
コンビニで助六寿司とお茶、それにプリンを買って、そこで昼食にする。

昼食休憩を1時間程とって元気を取り戻す。
しかし、足にマメが出来て、特に歩き始めは痛みが強い。
マメが固まるまで、しばらく我慢だ。
日差しを避け日陰を選んで歩く。
そして、休憩時間もたっぷり30分程とる。

川幅の広い大きな川に出会う。
その川の鉄橋を、山陽新幹線の列車が駆け抜けて行く。
川を渡ると、福山市の中心市街地になった。
さすがにJR福山駅も新幹線駅も兼ねて大きく、周辺も都会の雰囲気だ。
駅前から今日の予約したホテルに電話すると、反対の北口にあるという。
駅のコンコースを通って北口に出て驚く。
眼の前に福山城が建っている。
城郭がこんなに駅前にあるのは珍しい。
ホテルに着くと、コインランドリーがあるので、直ぐ汗をかいた衣類の洗濯をする。

夕食は、来る途中の駅南口で見つけた「創作オムライス」の店へ行く。
「ベーコンとモッツアレラチーズのトマトソース」と云うのを選ぶ。
それに生ビールを添え、携帯カメラでとって旅便りに添付する。
窓辺から夜の街を眺めながら、じっくりとオムライスの味をかみしめる。


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