No158 四 国 編(四万十町窪川町〜土佐市高岡町)


昨夜、かなり強い雨が降ったが、朝には晴天になった。
宿を出て旧街道を行くと、くろしお鉄道とJR土讃線の結合駅「窪川駅」の前を過ぎる。
さらに鉄道を横断し、トンネルをひとつ抜けると国道56号につながる。
国道56号を北上し川を渡ると、道の駅「あぐり窪川」があった。
「あぐり」の名の通り新鮮野菜館があって、その前に十数個の人形?が立っている。
近づくと、第6回かかし祭りとあって、そこはかかしコンテストの展示場のようだ。
お遍路さんや農婦姿等様々あって面白い。
この年2月にあったトリノオリンピックで金メダルに輝いだ荒川静香さんのかかしもある。
フィギヤスケートの自由種目で、プッチーニ「トゥーランドット」曲にのって滑る、あの「イナバウワー」スタイルだ。

ほほえましい案山子のひとつひとつを眺め、元気をつけて道の駅を出る。
その後は順調に進み、比較的平たんな道で来たのに、七子峠の標識を見て驚く。
平坦と思った道は、長く続くゆるい上り坂だったのだ。
その峠の手前に、食事処が幾つもあって昼食にしようかと思う。
しかしまだ11時で、ちょっと早すぎると思った。
峠の先で食事処を見つけようと先に進んだのが、大きな間違いだった。
その先は、急な谷間に沿うくねくねした下りの道で、店どころか人家さえない。
おまけに、腰を下ろして休むところさえみつからない。
とうとう一気に転げ落ちるように下って、中土佐町の市街地入口辺りに到る。
そこでようやく食事処を見つける。
すでに、昼時はとっくに過ぎていた。
親子丼セット(780円)を注文し、長めの昼食休憩をとる。

今日の宿は、そこから近かった。
国道56号からそれて、JR土讃線土佐久礼駅の前を通り、少し街なかに入ったところにある旅館だった。
宿に着いたのは14時半頃だけれど、幸いすぐに部屋に通される。
部屋で少し休んでから、宿の洗濯機を借りて汗を含んだ衣類を洗う。
今日は約20kmの短い旅だったけれど、明日は30kmを超える行程になる。
はやめに旅便りのメールをし、明日の準備をすませる。

夕食は娘遍路さんと一緒になる。
宿泊客は二人だけで、自然と話を交わす。
すこし引きごもりになって、お遍路に出たと云う。
お遍路では、様々な親切に出会い感謝の気持ちでイッパイになったと話す。
四国では地元の人が、お遍路をもてなす「お接待」の慣習がある。
その話になった時、彼女は「お接待」で千円札をいただいたという。
そして、そのお札は、今も大切にしまっているとうれしそう。
体力がないから、第一番霊場から始めて今日でもう20日になる。
そして、このお遍路体験を自分のブログに載せているとも話す。
ブログのアドレスを教えて欲しいと頼む。
同じ歩く旅をしている人には、恥ずかしいからダメと云う。

そんな会話の中で、彼女が母親に電話した話はチョッと眼がうるんだ。
彼女がお遍路の体験を話す電話口で、おかあさんは泣いていた云う。
娘3人を持つ父親のわたしにも、この涙の意味が痛いほど分かる。



次の日の朝も晴天になった。
朝日を浴びて旅立つ娘遍路さんにカメラを向ける。
すると、彼女は快く応じて旅姿を撮らせてくれた。(上記の写真はその一枚)

日本一周の旅を終えた後、この時の写真を彼女に送った。
すぐに彼女から丁寧な返事が届いた。
送った写真のお礼と共に、二人があった時の感想とその後の様子も書かれてあった。
彼女は2ヶ月かけて霊場巡りを終え、高野山参りまでして帰ったと云う。
手紙の用紙には、お遍路の時に彼女が撮ったスナップ写真が組写真風にプリントされていた。
そのセンスの良い写真は、彼女のお遍路旅の充実感が映し出されてもいた。

今日は32kmもあるロングな旅。
しかし、涼しいことと気合を入れて歩いたせいか順調に進んだ。
沿道の店で買った地元産のペットボトル「しまんと焙茶」がおいしい。
時には民家の路地を抜けて、防波堤外の浜辺に出てみる。
道の駅「かわうその里すさき」の先で道が分かれ、どちらに進むか迷ったりもする。
山道で昼時になり、折よく食事処が見つかる。
ラーメン・チャーハンセット(750円)を食べる。
食事処を出ると、段々畑のある農村風景が。
そのうちに、ビックリする様な豪邸が現われた。
この豪邸にもみられる、この辺りの民家建築の特徴に眼が行く。
切妻壁に瓦葺きの二段庇がそれで、重厚感をかもしだしている。
こうした土地々の風土から生まれる民家建築を見るのも旅の楽しみのひとつ。

そんなことで、ロングな旅も順調に終え、今日の宿に着いた。
土佐市の中心市街地の中にある旅館で、巡礼宿と云ってよいところ。
すでに何人かの巡礼客が到着している様子。
女将さんはすごく気の付く人で、こちらが訊く前に洗濯場へ案内してくれる。
お茶も冷たいのと温かいのを手際よく出し、入浴も順序良く手配される。
そして、体調を悪くし回復したばかりで、食事の世話ができないことを悔しそうに話す。

夕食は女将さんに教わった割烹料理の店へ行く。
生ビール、枝豆そしてにぎり寿司を注文する。
カウンター席で飲んでいると、隣の男性二人組が話しかけてきた。
歩いて日本一周していると話したら、生ビール一杯をごちそうしてくれる。
話がはずんで、別れ際にお二人の写真を撮り、後日送る約束をする。

宿に帰って、女将さんにごちそうになった話をする。
それがきっかけで、女将さんとお遍路さんの間に起きた数々の奇跡話を聴くことに。
それぞれが具体的で、余りにも熱心に話すようすは、私に何かを伝えたいかのようだ。
わたしにも願い事をかなえる幾つかの方法まで教えてくれる。
そのなかに、「一生にひとつだけの願い」がかなうお参りの方法もあった。
さらに、200回もの遍路旅を完遂した女性の金色と錦の納札を一枚づつ渡してくれる。
金色の納札は、ちぎって飲むとどんな病気も治ると云う。
それを聴いて、ガンを患う知人二人のためにもう二枚いただく。

夜、自分にとって「一生にひとつだけの願い」とは何だろうか、と考える。


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