No31 ひたち・みちのく編(むつ市〜大間町)

今日はむつ市から風間浦村まで約27kmの旅だ。
天気も晴れて、いい旅になる予感がした。
むつ市の町中を歩き始めて、昨日、宿までの道で迷った原因がわかった。
それは町の骨格をなしていた鉄道が無くなったことにあった。

下北鉄道大畑線は、4年前の2001年4月に廃線になった。
むつ市のJR大湊線下北駅から大畑町(現むつ市)の大畑駅まで18kmの路線だった。
むつ市の中心市街地は、この鉄道の田名部駅を中心に発展したといわれる。
廃線で田名部駅舎だけが、むつ市労働福祉会館として再利用されている他は、すべて撤去された。

昨日宿への道を尋ねると、地元の人はすぐそこといって教えてくれた。
しかし、そのまま行くと道路が行きどまりになっていた。
鉄道線路で行きどまりになっている道路が多いことに気づかずウロウロしてしまったのだ。
線路があることが分かっていれば、そのつもりで道順を探したことと思う。
また街を歩くと、何となく落ち着かない感じがするのは、まちを形成していた芯が無くなったせいなのだろうか。

そんなことを考えながら、下北半島の首根っこ部を横断して陸奥湾から太平洋側に抜けた。
浜関根と云う所から、国道が旧道とバイパス道路に別れる。
旧道を行くと、浜辺に並行する道の両側に民家が建ち並んでいた。
ところどころ空き地があって、天気が良かったせいか、視界がぱーと明るくなった。
たんぽぽが咲き乱れ、民家の庭にはチュウリップ等の花も咲いている。
春なのだ、しかも海にはもう夏の気配がただよっていると気持が浮き立ってきた。

民家の合間を抜けて浜辺に下りたり、少し庭先に入ったりして写真を撮った。
いままで想像したこともなかった本州最北端の土地にも、こんな確かな生活がある。
そんな当たり前のことに魅了されて夢中になってシャターを切った。
しかし、昼時になってこの街道筋の店で食事をと思ったけれど、数軒あった店はみんなとうに廃業の様子だった。
おそらく並行してできたバイパス道路の方に人の流れが移り、客が減ってしまったのだ。
ようやく大畑町役場付近で食事処を見つけた。
ニシンの日替わり定食を食べ、500円だった。

今日の宿は、下風呂温泉の温泉民宿だ。
何となくひなびた宿で、ゆったりとした温泉に浸かれることを期待していた。
ところが女将さんにお風呂は?ときくと、百円玉3個を手渡して、すぐ近くにある村営の共同温泉浴場へ、という。
入口でその三百円で入浴券を買い、さらに石鹸券百円とシャンプー券30円を追加した。
中に入ると、銭湯と同じような番台のところに受付があって、オバサンが券と引き換えに石鹸とシャンプーを渡してくれた。
浴場には4人ばかりの村人がいて、さかんに話をしていたが、方言が強くよくわからなかった。
湯はかなり熱めで源泉たれ流しだ。そのため、板張りの床は滑りやすかった。
時には足だけ浸かったりしてゆったりとした時間を過ごした。
よくわからない方言が飛び交う熱い湯の中で、これぞ下北の温泉だと納得したのだった。

夕食は、ここの名物「そい」という魚の焼きと刺身を中心に品数も多く食べきれなかった。


次の日は、さらに良い天気で快晴になった。
今日の旅は、本州最北端の大間崎まで、むつはまなすラインと呼ばれる海沿いの道を行く。
沿道は、大量の昆布を竿に干す光景が続く。
なかには、昆布を路上にもひろげて乾燥させたりしている。
厳しい冬が終わり、春が来てそして夏がやってくるという村人の解放感が漂っているのだろうか。
街道全体がのんびりした雰囲気だ。

大間崎の5〜6km手前の浜に漁師さんの家が建ち並ぶところに出た。
漁具がごろごろする軒先を歩くと不思議な気持ちになった。
冬はわたしには想像もつかない厳しさと思われるのに、こんなに海とまじかに向き合って生活している。
都市暮らしに慣れて失った何かがここにはある、そんな懐かしい魅力を感じたのだ。

ついに、本州最北端の大間崎に到着した。
千葉県銚子駅前から944km、49日目(内5日休養日)である。
旅立つとき、密かに第一目標とした地点だ。
大間崎灯台の向こうに、津軽海峡をはさんで北海道の山々が見える。
ホッとしたら、お腹がすいた。
宿を出てから、食事処やコンビニなどの店もなく、昼食抜きでここまで来てしまった。
幸いここには何軒か食事処がある。
午後2時ごろでラーメン等の軽いものをと思ったけれど、海鮮料理が売りの重そうなものばかりだ。
魚料理は毎日食べて食傷気味なので、マグロカレーがある海峡荘というレストランに入った。
しかしそのマグロカレーは品切れで、次の焼肉定食も肉が足りないということで魚のフライとミックス定食になった。
食後、展望所で写真を撮ったりぼんやり海峡を眺めて過ごした。

本州最北端の地ということで、もう少し賑わいがあるかと思っていたが、人がパラパラと着て、すぐにどこかへ行ってしまうようだった。

今日の宿は、その名も「北の宿」という民宿だ。
夕食では、ハーレーダビットソンを駆ってテントを張りながらツーリングしている人と一緒だった。
山形で板前をしている佐藤さんと云った。
テントで寝るのはさすがにまだ寒くて、こうして時々は宿に泊るのだそうだ。
ちょっと眼には怖そうな感じがしたけれど、佐藤さんの方から話しかけてくれた。
ご覧のように笑顔が素敵で、つい「ハーレーのよさは何ですか?」と聞いてみた。
すると、「ハーレーは直せる範囲で故障してくれるところだ」と愉快そうに話してくれた。
二人の食事が終わる頃に、4人連れが入ってきた。
岩手県大船渡市のバス運転手仲間で、やはりバイクでツーリングしているという。
引き続き、お互いの旅の話で盛り上がり楽しい夕べとなった。


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