No61 北の大地 編(稚内市潮見〜豊富町)

稚内市潮見の宿は、満室かと思うほど宿泊客でイッパイだった。
オホーツク海側から日本海側に来た途端、道路も宿もひと、ヒト、人と云った雰囲気だ。

この日は、天気予報が曇りのち雨となり雨装備で出発する。
宿を出てすぐの「潮見4丁目」の交差点から、道は二手に分かれる。
日本海沿岸の道とやや内陸を行く道である。
日本海側のルートは、宿を探すのが難しかった。
それに、ここからはできるだけ石川文洋さんが歩いた跡を辿ってみたかった。
だから、石川さんが選んだ内陸寄りの道と今日の宿を決めるのに迷いはなかった。

歩き始めると、宗谷岬をめざすいろんな人と出会う。
名寄市から歩いて行くという人や、自転車でツーリングする人たちだ。
仲間とツーリングしている一人が、追い越し際に声をかけてきた。
このグループは、昨日すれ違った記憶があった。
わたしが、「銚子から歩いて旅をしている」と話したらおおいに興味を示した。
彼は千葉県夷隅町に住む鶴淵さんと云う。
「自転車で地球を守ろう」と書いた黄色のTシャツを着て、若い仲間5人で鹿児島まで行くそうだ。
ほんの立ち話だったけれど、意気投合して互いに旅を終えたら報告し合おうと誓った。

後日談
この旅を終えて、この日の彼の写真を添えた手紙を出したら、うれしいことに返事がきた。
仲間の中には、膝を痛めて断念したり、スケジュールの都合上、中断したりしたが、4人がJR鹿児島駅前に無事ゴールできたそうだ。
彼自身は、さらに屋久島、沖縄本島、石垣島等をまわり、日本縦断の旅を終えたという。
自転車での走行距離約4400km、総移動距離約10800kmだったそうだ。
かれはこうした自転車旅行や地球一周の船旅等の体験を通じ、地球環境や人生を見つめ続けている。
そうした彼の体験を、毎年の年賀状で知ることが、わたしの喜びとなっている。

雨装備で出発したが、徐々に晴れて暑くなってきた。
休憩したくても、日陰で休める適当な場所は見つからない。
仕方なく歩道にシートを敷いて休むことに。
ところが、昼頃になるともっと暑くなり、写真の体勢で雨傘を日傘代わりにさして、おにぎりを頬張るはめになった。

ところが、開源PAというところを過ぎたら、急に雲行きが怪しくなって雨が降り出した。
そこから今日の宿まで8km程は、雨宿り休憩するところがなく、傘をさして歩き続けるしかなかった。

今日の宿は、石川文洋さんの著作でも紹介されているユニークな民宿だ。
雨に濡れて到着したわたしを、オーナーの小松さんは温かく迎えてくれた。
すぐに風呂を沸かし、自動洗濯機も無料で使って良いという。
雨で洗濯物が乾かないので乾燥機はないかと尋ねると、近くにあるオートキャンプ場の管理ハウスに案内してくれた。
ここのコインランドリーを使って洗濯物が乾く間、小松さんとビールを飲んで待った。
雨なのでバイクや自転車で旅をする人たちが大勢テントを張っている。
ここは兜山公園という大きな自然公園の中にある町営施設だそうだ。

小松さんはオーストラリア大陸を自転車で一周する等、大の旅好きである。
その様々な体験から、旅をする若者に安い料金の宿を提供し、旅人同士が夢を語り合う場にする、と云う彼の夢を持つようになったという。
そして、兜山公園と云う絶好の地にウッドハウスを見つけて開業したのが、この民宿「夢大陸」だ。
食事はオーナーの小松さん自身がつくり、宿泊客はオーナーと一緒に食べるのが決まりになっている。
宿泊客はわたし一人だったので、二人で食事しながらする旅の話は愉快だった。


翌日は、朝から雨だった。
宿が気に入ったことと疲れもあって連泊することにした。
朝食後に朝寝?したり、宿泊ノートを読んだり、小松さんと雑談して過ごす。

小松さんの話によると、石川文洋さんに限らず、歩いて日本一周や縦断旅行を目指す人が毎年やって来るという。
今年も、4月に若い女性が、6月に定年になった男性が泊ったそうだ。
どちらも、わたしがこれまでにあちこちの宿で聞いた人に相違なさそうだ。
石川文洋さんが書き物をしていたという部屋で、わたしも日記を書いたりしてみる。
たしかにこの宿には、旅人のいろんな夢が漂っているような気がしてきた。


連泊した翌日は曇りだった。
小松さんに、大きなおにぎりを用意してもらい出発する。
小松さんはサロベツ原野を突っ切て行く道を勧めてくれた。
石川さんはその道を行って何度も迷ったようなので、わたしは国道40号を行くことにする。
歩き始めは、腰にギックときてなんとなくリズムカルに歩けなかった。

昼近くになって、歩くリズムが良くなった頃、日陰になった廃屋の玄関が眼にとまった。
そこで、少し早い昼食をとることにした。
今日の宿は、JR宗谷本線豊富駅近くにあり、道路標示によると残り5km程先のようだ。
その道路標示が、途中に道路工事個所があって、その先から分からなくなってしまった。
どのくらい歩いたか分からないまま行くと、電話で予約したホテルの前に着いた。
まだ13時頃だけれど、チェクインできた。
しかも、和室が良いと云ったら、洋室から変更してくれた。
シャワーを浴びてしばらく部屋で休んでから、豊富町の市街地を散策する。
郵便局で旅費を引き出したり、コーポで日記用の大学ノートを買う。
大通りの商店街は、まだ何とか機能していると云う印象だった。




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