No69 北の大地 編(余市町〜岩内町雷電温泉)


余市地方は、昨夜から今朝にかけて大雨、洪水、雷注意報が出ていた。
しかし、雨は朝方までに止み曇りの天気なので出発する。
ところが、時々、小雨が降ったり、急いで雨具の上着を取り出す程の寒い風が吹いたり、 日射しが出て暑くなったりと不安定な天気だ。
それでも、全体的には曇りで気温が低く歩きやすかった。
沿道には、野菜売り場が何箇所かあって、その内のひとつで昼食にした。
テントが張ってあり、中にテーブルとイスを備えて休めるようになっている。
おいしそうな蒸したトウモロコシ1本(200円)を買って、コンビニのおにぎりと一緒に食べる。

そこから先は、長い長い勾配のきつい稲穂峠越えとなった。
さいわい曇りで気温が低いので助かったけれど、この時、雨だったり、日射しのある暑い日だったら、と考えるだけでゾッとする。

ところで、北海道の旅で、良く目にするのがパターゴルフだ。
今日も、広い緑の芝生で、それを楽しむ人たちを見かけた。
最初見た時は、何をしているのかと思った。
ゴルフのパターだけでボールを転がして楽しむスポーツだと云う。
観光地では、家族でも楽しむそうだけれど、高齢者に人気だと云う。
そう云えば、高齢者に人気のスポーツとしてゲートボールがもてはやされていた。
この旅では、高齢者がゲートボールを楽しむ姿を見かけないように思う。
何ごとも、移り変わりの激しい時代なんだろうか。

JR余市駅前の旅館から27km程のところに、広い野外駐車場の様なスペースに前面がオープンの大きな倉庫の様な建物があった。
かなり疲れてきて、その建物前のコンクリート面に腰を下ろして休む。
すると、従業員と思われる男性が来て「ここで休んでいて倒られたら、迷惑なので出て行ってくれ」という。
「15分位休んだら行くので、何とか休ませてほしい」と頼む。
しかし、けんもほろろに駄目だと云う。
この旅で、初めて味わう苦汁だった。

仕方なく立って歩き始めると、三叉路の交差点になった。
国富交差点で、ここで国道5号線は左へ直角方向に舵を切る。
計画したコースは、ここから始まる国道276号線をたどる。
それで今日の宿は、国道276号線沿いにある旅館だったが、満室で予約がとれなかった。

電話でようやく予約できたのは、このまま5号線を2〜3km行ったJR小沢駅前にあるという旅館だった。
少しコースから外れるけれど、止む得なかった。
その旅館は、小沢駅前にある何の変哲もないたたずまいだった。
だが中は小ぎれいで、まっ先に眼に入ったのは、2階に上がる階段の壁に掛けられた額縁だ。
なんと「男はつらいよ 望郷篇」のポスターとあつみきよしのサイン入り似顔絵が入っている。
宿の人に尋ねると、この映画で、JR函館本線と小沢駅はロケ地になったそうだ。

寅さんシリーズ第5作で、マドンナ役は長山藍子さんが演じた昭和45年の作品だ。
残念ながら、わたしはこの映画を観ていない。
旅館の洗面所には、ステンレスの流し台に赤銅製の洗面器が置かれている。
その洗面所の窓から望む小沢駅は、まさに昭和を彷彿とさせる。
寅さんも、もしかしたら長山さんも、この窓からこの風景を眺めたに違いない。
これはわたしにとっても、昭和と云う故郷を偲ぶ「望郷」の念にかられる風景だった。


国道5号線は、ほぼ函館本線と並行してはしり、このまま行けば倶知安ー長万部ー函館へと続く。
しかし、旅の原則通り海辺の道を行くために、次の日は国富交差点に戻り、国道276号を行く。
国道276号に入ってしばらくすると、異様に豪華な建物が眼に飛び込む。
共和町役場だった。
町役場の建物は、防災拠点にもなり、また町のシンボルにもなる。
だから、ある程度豪華な建物であっても良いと思う。
しかし周辺の景観から余りにも突出して、まるで宮殿の様な威圧感を感ずるのはわたしだけだろうか。

天気は晴れて、湿度が低いのかカラッとした暑さでさわやかだ。
しかし、足の筋肉と股関節が張り、休む度に足裏マッサージをする。

岩内町に入って国道229号線との交差点で、昼時を迎えた。
折よく小さな食堂があり、そこで親子丼の昼食をとる。
この先、国道229号はトンネルが多く、トンネル内の通行が気がかりだった。
食堂の主人に聞くと、「多分、トンネル内は歩道がある」と云うことだ。
地元の人でも、普段、トンネル内を歩くこともないので確かなことは分からないようだ。
岩内町の市街地を抜けて、海辺の道をしばらく行くと、トンネルの連続になる。
その内の雷電トンネルは3570mもある。
幸い幅が50cm位と狭いが歩道が付いていた。
少し歩きにくいが、トンネル内は涼しく平らで、交通量も少ない。
疲れた身体には、トンネルが多いことはむしろありがたかった。

今日の宿がある雷電温泉は、トンネルとトンネルの間の狭い高台に2軒のホテルがあるだけだった。
その内の予約したホテルは、国道に近いほうでホッとする。
案内された部屋は、2階で西日をまともに受けていて、サンセットを眺めるには良さそうだ。
しかし、カメラを構えると、下のレストランと大浴場の屋根が邪魔なので、3階の部屋に替えてもらう。
夕食の料理は部屋に運ばれ、サンセットを眺めながらの食事になった。
食事を終える頃には、海は漆黒の闇となる。
やがて、5隻のイカ釣り漁船の灯りが、ポツンと輝きながら等間隔で、ゆっくり右から左へと流れて行くのだった。



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