No83 越前・中・後 編(新潟県村上市桑川〜胎内市本町)

今日は天気も晴れて、村上市肴町まで20km弱と短い旅だ。
道もJR羽越本線と日本海の間の狭い海岸線に沿う一本道。

それが気持ちの余裕となるのか、アチらコチらとカメラを向ける。
海岸沿いの狭い地域だけれど、さまざまな生活風景が見られる。
ハサ木という木組みにかけられた茶色がかった黄金の稲束。
家庭菜園のようなちいさな畑地での野菜づくり。
浜辺に並べられて出漁を待つちっぽけな漁船。
北国の写真で良く見る顔をすっぽり覆い、眼だけ見せる農婦の姿等々。
そしてまた、バス待合所では、床にシートを敷いて真向法体操する自身のポートレイトを撮ったりする。

砂浜で遊ぶ家族の写真を撮り、JR羽越本線間島駅近くで昼時になった。
折よくレストランがあり中に入る。
和食が続いて洋食が食べたい気分だったので、シーフードドリアセットをオーダーする。
出されたドリアの量が少なく、フランスパンのニンニクトーストを追加する。
それでも歩く旅人には物足りないボリュームだった。
久し振りのドリアは美味しいけれど、妻が作る方が勝るかな、とチョと思ったりする。

休み毎に真向法体操を十分にして、ゆっくりしたペースで進む。
そして、村上市の市街地へと降る峠道で、最後の休憩をとった。
道路脇の小さな駐車場の様なところにシートを敷いて腰を下ろす。
今日の目的地はもうすぐと、ホッとした気持ちで周りに目をやる。
すると、辺り一面に落ち葉が漂いハッとした。
春4月に旅立ち、いつの間にか9月末の秋になっている。
指を折りながら、過ぎし月日を数えてみる。

道中、やけにロードレース姿で自転車を駆る若者が目に付いた。
宿に着くとその訳が分かった。
明日、村上国際トライアスロン大会があるからで、この宿にも出場する何人もの若い男女が泊っていた。

夜、いつもの旅便りを家族宛にメールする。
そして、昼食で食べたドリアンは妻がつくるものの方が美味しいと思った、と付け加えた。
すぐに妻から、
ほめて貰って嬉しいです。帰ったらつくってあげるね。赤ワイン付きで。
と返信が届く。
歩く旅を続けていると、こんなたわいない話が素直にできてしまう、不思議だ。


次の日、村上市肴町の朝は雨になった。
涼しくなって、身体の方はかなり楽になったけれど、足裏や関節の痛みが消えない。
疲労骨折の心配もあり、この雨では連泊しようと考えた。
宿のご主人にその旨話すと、今日はもう満室だと云う。

少しがっかりしたけど、これも出発しろと云う天の啓示と思って気を取り直す。
雨の中、傘をさしての歩行だけれど、意外と歩みは軽かった。
今日の宿は、JR羽越本線中条駅の近くだと予約した時に教わる。
それで、道を海沿いの国道345号からJR羽越本線に沿う国道7号に切り替えることにする。
八日市と云うあたりで、国道7号に向かう地方道が分かりづらく少し道に迷う。
国道7号に出たところに、道の駅「かみはやし」があった。
ここで、雨宿りも兼ねて休憩する。

午後になると雨は上がったけれど、風が強くなる。
帽子が吹き飛ばされそうになるので、手に持って歩く。
休憩は風を避けて、パチンコ店の軒先や交差点の横断地下道でとる。

遠くでお城の様な屋根が見え、近ずくと民家だった。
1階は食事処のようだけれど、今は営業している気配はない。
われわれ世代あたりまでは、自分の家を持つことを、「一国一城の主になる」と云ったものだけれど・・・。

今日の宿はJR羽越本線中条駅から少し離れた市街地の中にあった。
そのたたずまいは、幕末の時代劇に出てきそうな古い旅籠風の雰囲気だ。
宿の2階正面に白地に青い上がり藤が入る大きな家紋が掲げられている。
奥行きの長い造りは、昔のままの様だ。
こういう歴史の感じられる旅館は大好きだ。
部屋のテレビは、NHKが映らず大相撲の千秋楽が観られなかったのもご愛嬌と云うもの。

夕食は旅人にとって過不足ないボリュウムで美味しかった。



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