No89 越前・中・後 編(富山県朝日町宮崎〜滑川市中川原)


今日の旅は、黒部市のJR黒部駅前まで22kmほど。
朝方は曇りで気温が高く、少し身体が重い。
それで、休憩時に入念にストレッチをするとようやく元気が出てきた。。
入善町の平野部に到ると、広々とした農村風景が気分を明るくしてくれる。
さらに先に進むに従って、だんだんと「まちが濃くなる?」感じがしてくる。
人や家屋の密度が高まり、そこから醸し出される雰囲気の濃度感、と云ったらよいのか。

やがて黒部川のたもとに到る。
この河に架かる黒部大橋は、車道と歩道に別れていた。
この旅では、歩道のない長い橋で大型車両とすれ違う恐怖を何度味わったことか。
ホッとするとともに嬉しくなってくる。
歩道があれば、ゆっくり川面や上下流の遠方風景を楽しむことができる。
黒部川の上流を望むと、屏風のように高い山々が立ちはだかる。
その山々を背景に、大河は玉砂利だらけの広い河川敷を大きく蛇行して流れていく。

国道8号線の荻生交差点を右へ、黒部市の中心市街地へ向かう。
沿道には、ローソク屋、のし屋、畳屋等といった今では余り見かけない店が目に付く。
このことは、この地では日本の古い伝統がまだ日常生活で息づいているということか。
始めてきたこのまちに親しみを覚える。

今日の宿はJR北陸本線黒部駅前にあると云う案内だけれど、富山地鉄本線黒部駅と云うのもあって迷う。
ぐるぐる迷ってようやくたどり着くと、新しい近代的な建物の旅館だ。
かつて典型的な駅前旅館だったのが、最新のビジネス旅館に変身したばかりの印象だ。
部屋は、一人用の個室は洋式で、複数人用は和室と云った構成。
トイレはウオシュレット、循環式の風呂、自動感知照明等といった最新設備が完備。
食堂はセルフサービス、料理はふつうの家庭料理風で過不足なく、長期滞在のビジネス客に喜ばれそうだ。
現在考えられる最先端のビジネス旅館はこういうものか、と思た。



次の日は、一日雨と雷の予報。
朝、連泊しようと宿のご主人に申し込んだら、今日はもう満室だと云う。
これも天命と受け止めて出発することに。
ところが、またもや傘がないことに気付く。
上越市のコンビニで買ったビニール傘は、とっくに、どこかに置き忘れてしまった。
不用の傘がないかと女将さんに尋ねると、「お客さんのもので良く分からない」と気のない返事。

それで、雨が降らないうちにコンビニを見つけようと、急いで出発する。
しかし、すぐに雨が降り出しあせる。
今日は富山地鉄本線石田駅辺りに出て、この鉄道に沿う旧街道をゆく。
幸い小雨の降ったり止んだりで、魚津市に入ってようやくコンビニを見つけ傘を買う。
コンビニを探すうちに方向感覚を失い、海岸に出てしまった。
何が幸いするか分からないもので、その道は「蜃気楼ロード」という魚津市の名所だった。
ここから、春や冬に富山湾上の蜃気楼が見られるそうだ。
おりしも、対岸の能登半島の一部に雲間から日が射して、照らされた町並みがクッキリと浮かび上がって見える。
蜃気楼ではないけれど、神秘的な光景に眼を見張る。
また、海辺には越中の国司だった大伴家持の歌碑が建っていた。

  越の海の 信濃の浜を行き暮らし 長き春日を忘れ思へや

魚津市内の双葉郵便局で旅費の補充をして表に出ると、強い雨になった。
民家の軒下に腰を下ろし、雨に濡れる路上を眺めていると不思議な感覚になる。
懐かしい、時間も止まったような感じ。
雨が上がり歩き始めて程なく、大観覧車が見える遊園地の様なところにでる。
ミラージュランドというそうで、そこの水族館内のレストランに入る。
強い雨に逃げ込んできた客で店内は混雑していた。
食券販売機を見つけ、チャーシューめんとライスの食券を購入。
食事後も窓の外を眺めながら、雨が降り止むのを待つ。
結局、この日は一日中、強い雨の降ったり止んだりが続いた。

滑川市の中心市街地は、思っていたより小さかった。
雨降りのせいか、街の雰囲気も淋しい。
今日の宿は、JR滑川駅のすぐ近くにある全国チエ―ンのホテル。
夕食は、近くのコンビニでオムレツ、ごぼうサラダ、おでん、缶ビールを買い、ホテルの部屋でとる。
たまにはこうした食べたいものを選んでとる食事もイイもんだ、と悦に入る。
部屋の窓から外を覗くと、JR滑川駅のホーム越しに民家の町並みが望めた。
その町並みは、地方色が感じられない景観でチョッと残念な気がする。
空からはようやく日が射し、明日は晴れかと安堵した。



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