No96 越前・中・後 編(越前町玉川〜敦賀市杉津)

今日は計画では、ここ越前町玉川から河野村(現南越前町)まで行く予定だった。
河野村の旅館や民宿に予約の電話をすると、ここでもいろいろな理由を云って断られてしまう。
河野村観光協会に問い合わせても、やはり一人客は敬遠されると云うことだった。
それでは敦賀市まで一気に行こうか、とも考えた。
しかし、行程は35km前後となり、天気が雨の予報なので無理しないことにした。
と云うのも、河野村の手前でまたもや国民宿舎が見つかったからだ。
国民宿舎は満室でない限り、一人客でも快く受け入れてくれる。

そんな訳で、今日は同じ越前町にある「国民宿舎かれい崎荘」まで約12kmの旅になった。
最短行程の旅なので、のんびりとNHKの朝ドラ「風のハルカ」最終回を観てから出発する。
さいわい天気はくもりで、時折り陽も差してくれる。
道は山と海の間の狭い土地を這うように進み、幾つもの小さな漁港に出会う。
その漁港を要に「越前ガニ」の看板や表示が目立つ店や民家の家並みが続く。
小さな漁港でも、こんなに多くの人々の生活を支えている。
この旅で何度も思い知らされる海の恵みの偉大さだ。
それを象徴するかのごとくひときわ豪壮な民家に目を奪われる。

やや長いトンネルを抜けると、少し大きい漁港に出会う。
漁船も大きめの船が揃い、そこで写真を撮ったりする。
そこからは、沿道は街道の賑わいになる。
ところどころで、幾つもの長い防波堤に守られた浜辺が顔を出す。
そこには沢山のランプや魚網を載せた小舟が並んでいる。
街道は温泉と海鮮料理を売りにした旅館や民宿の看板が目立つ。
「越前がにミュージアム」の横で休憩をとる。

そんなのんびりした歩みでも、「国民宿舎かれい崎荘」には昼過ぎに着く。
昼食はここのレストランでラーメンライスにする。
チェックインは午後3時半になっているけど、昼食後少し待ってから部屋に案内してくれた。
ここは町営の国民宿舎で、露天風呂もある温泉施設「日本海」と一体になっている。
昨日の国民宿舎は民営だけれど、一昨日のは公営の国民宿舎だ。
歩く旅での経験からすると、こういう施設は平成の大合併前、各市町村毎に設置されたようだ。
住民の福祉施設として、国からさまざまな名目の補助金を導入して造られている。
お陰で3日連続で国民宿舎に泊り、広い部屋と温泉でリフレッシュする。
そう云えば、足にできたマメも余り気にならないが温泉の効用だろうか。

夕食は付属のレストランでとることになっている。
温泉に浸かってからレストランに行くと、すでに大勢の宿泊客でイッパイだ。
今日は満室だそうで、予約がとれたのはラッキーだった。
宿泊客のほとんどは、60歳以上の夫婦連れと思われる。
静かに話しながら食事する夫婦。
黙って黙々と食べる夫婦等々。
それぞれ、どんな人生を歩んできたのだろうか。



翌朝、起きて直ぐに温泉に浸かる。
部屋は携帯電話の電波状態が悪かった。
昨夜は受信できなかったが、朝見るとメールが3件入っていた。
食堂を兼ねるレストランに行くと、電波状態がよくそこから返信する。

天気予報は今日も雨で、昼頃からまとまった雨になるという。
途中小雨が降ってきたけど直ぐに止み、まずまずの曇り空だ。
旧河野村に入り風格のある民家が建ち並ぶところになった。
そして、海側の小さな広場に北前船の何分の一かの模型が設置されていた。
なぜこんなところにと辺りを見渡すと、大きな木造家屋の門前に立て札が立っている。
それによると、ここは「北前船主の館 右近家」だという。
右近家は代々、江戸後期から明治中期にかけて、北前船の廻船経営で財を成したという。
中に入ってみようかと思ったけれど、周りの民家建築の方に興味がひかれてしまった。

そこからしばらく行くと、河野というところで三叉路の交差点となる。
この先の海沿いの道は、「河野海岸有料道路」だという。
沿道には民家もあって、普通の道路と変わらない。
民家の人たちも家の前の道を使うのに料金を払うのだろうか、と思いながらこの道を行く。
有料道路のせいか、交通量は少なくほとんど車を気にしないで歩く。
敦賀湾を挟んで対岸には、蠑螺が岳が残雪を冠して雄大に横たわっている。
時々良い気分になって、大声で歌をうたったりしても気に留める人もいない。

敦賀市域に入ってしばらくすると、有料道路は国道8号に接続する。
大比田交差点で、そこから1kmほど先のところに今日の宿があった。
前面に大きく「お食事、宿泊」と書いた3階建ての鉄筋コンクリート造りの大きな建物だ。
強い雨が降る前にできるだけ宿近くまで行こうと昼食抜きで道を急いだ。
それで時刻は、まだ午後1時半頃だった。
近づいてみると、1階部分の店舗は閉鎖状態で、別棟のレストラン棟も閉店してる感じだ。
どの入口も閉まっていて、人の気配がない。
予約した電話先に連絡しても音沙汰無しだ。
仕方なく荷物を入口において、もと来た道を戻りコンビニで弁当を買う。
それを持って戻ると、丁度宿の人が来て部屋に案内してくれた。
部屋に入ると、外は雷が鳴って強い雨になった。
部屋からは、敦賀湾と杉津の集落が見下ろせて素晴らしい眺めだ。

夕食はレストラン棟でとることに。
そこで宿のご主人がいろいろ話をしてくれた。
15年前からこの地の宿泊料金はどんどん下がってしまった。
一泊12,000円から現在(当時平成18年)は8400円の相場になった。
昨日は土曜日で8人の宿泊客があったけれど、今日は私一人だという。
バブル景気が破たんした以降、、どこも宿の経営は大変なのだ。



Back

Top

Next