No32 「一期一会」 宿編U

いま私の部屋に、左記にある直筆のお地蔵さんの絵ハガキがかざってある。
7年前に亡くなった初孫のまりあに似た顔立ちのかわいいお地蔵さんだ。 画面全体にやさしい雰囲気があふれていて、わたしの大切な宝物である。
この絵が私の手元にあるのは、まさに「ふしぎな縁」の賜物であった。
歩いて四国を一周する旅では、多くの宿で「一期一会」の縁をいただいた。
なかでも愛媛県のM旅館は、女将さんがあかるく気さくで気配りが行き届き、宿に着いた途端に元気が湧いてくるような雰囲気があった。

その女将さんが、翌朝の出立の時に、わたしにさまざまなお遍路さんの話をしてくれた。
左の写真は、女将さんが「怠け遍路」と自称するひとの作品を前に話されているところである。
この怠け遍路さんは、奥さんを亡くして高野山で出家された神戸の男性だそうである。 何度も歩いて四国巡礼をしながら、こうした小さな彫刻作品や絵ハガキを創作されているそうだ。 そして、その作品のいくつかを、常宿となっているこの宿に置いて行かれるそうだ。 どの作品にも、怠け遍路さんの悲しみや愛情の深さが伝わってくる。

別れ際に、おかみさんは怠け遍路さんの絵ハガキをいっぱい持ってきて、好きなものを一枚とって良いと言ってくれた。 わたしは、一目でまりあに似たお地蔵さんの絵ハガキが気に入り、ありがたく頂戴した。
その日、怠け遍路さん、女将さん、わたし、さらには亡くなった怠け遍路さんの奥さんやわたしのまりやとが、ふしぎな縁で結ばれたような気がしたものだ。

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