No33 「一期一会」 宿編V

私が歩いて日本一周しようと思い立ったのは、報道カメラマンの石川文洋さんについてのある新聞記事がきっかけだった。 石川さんが、歩いて写真を撮りながら宗谷岬から沖縄まで旅をしたというものだ。 定年退職を一月後に控え、退職後の生活をあれこれ考えていた私は、これだと思った。 ずーと心の奥にしまいこんでいたものを、引っ張り出されたようなものだった。
その石川さんを身近に感じた宿があった。

その宿は、石川さんの著書「日本縦断 徒歩の旅」にも記載されている北海道豊富町の民宿である。 宿の主人Kさんは、約1年かけて自転車でオーストラリア一周を成し遂げたそうである。 そんなご自分の夢を実現した体験から、さまざまな夢に挑戦する旅人を支援したいと民宿を始められたとのことだ。 山小屋風の民宿で、その名も「夢大陸」という。 独身のKさんは、料理もご自分で作り宿泊者と一緒に食べる。 食事をしながら、旅について語り合おうというものだ。 旅の喜びと苦しみを知るものどおしが分かりあえる楽しいひと時である。 kさんや私の体験談、石川さんやその他の徒歩や自転車で日本縦断または一周旅行する人の話、と話題は尽きない。 ここで、歩いて日本一周の旅を目指す人が結構いることも教わった。 やはり世間は広く、私と同じことを考える人が何人もいることに驚いた。

この宿には連泊して、石川さんが書き物をしていたというテーブルで自分も日記等を書いてみたりした。 この時、まだまったく自信が持てなかった「歩いて日本一周する夢」がかなうかもしれないという漠然とした想いが湧いた。


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