宿での楽しみは、食事と並んでお風呂である。
観光地や保養地の宿では、この二つが宿の評価を大きく左右する。
一方、ビジネス客を対象とする宿でも、風呂無しというわけにはいかない。
日本人にとって、仕事の疲れをとるのにお風呂は欠かせない。
最近は、FRP素材を使って壁、床、天井、浴槽を一体成型した
ユニットバスといわれるものがあり一般家庭にも普及してきた。
中でも、トイレ、洗面台、浴槽が揃う3点ユニットバスが、ホテルを中心に多くの宿で採用されている。
したがって、トイレが部屋付きであれば一緒に浴槽、洗面台も付いていることが多い。
トイレが部屋の外にあって、お風呂だけが部屋付きということはない。
だから、トイレが部屋の外ということであれば、お風呂も室外の共用ということになる。
小さな旅館や民宿では、共用風呂は宿の家族も入るというところもある。
変わった経験では、ある旅館で「お風呂は、近所の銭湯で」といってチケットを渡されたことがある。
また、温泉民宿ということでどんな温泉かと楽しみにしていたら、これも近くの村営温泉浴場を指定されて
下駄を鳴らして通ったこともあった。
今想うと、それはそれで旅の楽しい体験になっている。
また、中・大規模の宿では、部屋に浴槽があっても別に共用の中・大浴場を設けていることがよくある。
これは部屋付きの小さな浴槽よりも、より広くて大きな浴場の方を好む客が多いということである。
特に景勝地や温泉地の宿では、眺めの良い大浴場や露天風呂がむしろ欠かせない。
だから、共用風呂のない部屋風呂だけという宿は案外少ない。
それを、宿の種類別にみてみると以下の表になる。
歩く旅をしていて気付くのは、温泉付きの宿が思いのほか多いことである。
天然温泉、ラジウム鉱泉、光明石温泉といろいろあるが、どれも温泉付き宿として表にすると
次のようになる。
全宿数の15%近くになるのは、ちょっと驚きである。
日本一周徒歩の旅を完遂できたのは、これらの温泉付き宿で疲労回復できたお陰であった。
さて、洗面場はどの様になっているか。ホテルの様にユニットバスのあるところは、洗面台も浴槽と同じところにある。
また、観光地や保養地の宿は、大抵、部屋の景観の良い窓際の隅に設けられている。
部屋の外の共用の洗面場は、上の写真のようにいろいろと宿の歴史を感じさせてくれるものがある。
感心したのは、全国ほとんどの宿では冷水と温水の給湯設備が付いていたことである。
給湯設備が新旧いろいろで、使いづらかったり、出が悪い等のものもあったけれども。