戦後60年ごろの日本の宿はどんなだったか。歩いて日本一周した時の体験から明らかにしたいと思った。
その報告も最終章になってしまったが、どれだけ明らかにできたか、はなはだ心もとない。
厚生労働省の統計によると、旅館数は昭和55年度8万3226軒のピークから平成19年度の5万2259軒まで毎年減少傾向が続いている。
それに反して、ホテル数は微増傾向が続いている。
また、かんぽの宿や休暇村等の宿は廃止や民営化が避けられない状況にある。
さらに昨年(平成20年)のアメリカの金融破綻に端を発した世界的な大不況の影響で、多くの宿が廃業に追い込まれているのではと思いやられる。
沢木耕太郎著「旅する力」に、「旅は作るもの」という文章がある。
まさに旅は在るのではなくて、旅する人が作るものである。
どんな旅をするかで、どんな宿に泊まるかが決まる。
また、その宿でどんな体験をするかも旅人次第かもしれない。
だから、ここで述べた「日本の宿」は、歩いて日本一周した私の「宿感」でしかないかもしれない。
それでも、10年後、20年後あるいはもっと後で、戦後60年の時代はこんな旅をしてこんな宿があったのかと興味を持つ人が
いれば望外の喜びである。
ー終わりー