日本一周徒歩の旅では、宿の予約を前日までに電話等で必ずとることにしていた。
その時に、宿泊料金はもっとも気にかかることだった。旅の前半では、予約の時に必ず確認することにしていた。
しかしやがて、宿泊料金の相場の決まり方が分かってきた。その決定要素は、建物の造作や部屋の広さ・内装・
寝具等の快適度、浴室・トイレ・洗面所が部屋付きか共用か、食事の内容、諸設備の充実度といったものである。
それに都会や観光地等の地域相場が加わることもある。
例外が稀にはあるけれど、宿泊料金はこれらの要素から総合的に決められていて納得のいくものだった。
それで、予約の時に宿泊料金を確認しなくとも、支払いの前までにはほとんど予想できるようになった。
市場原理の冷徹さといったものを感じたものだ。一方で、それにもめげずにお金には代えられない心のこもったサービスをしてくれる宿も多く、
つくづく日本の宿はすばらしいと思った。
さて、前回に記載した宿の種類別2食付き宿泊料金の平均値を取り出して下のグラフにしてみた。
グラフからすぐに気付くのは、かんぽの宿と休暇村(ウエルサンピア)それに次いで国民宿舎の平均値が抜きんでていることだ。
これらの宿は、前に述べた宿泊料金のどの決定要素においても
高級な観光旅館やホテルに劣るものはない。さらにこれらの宿は、格別な景勝地に立地しており、
この料金は全体的にかなりの割安感を抱くものである。一人旅の旅人にも、部屋が空いている限り断わることもなく
広い部屋に案内してくれる。苦しい歩く旅を続ける旅人には、まさに極楽の宿だった。
もちろんこうした割安なサービスを提供できるのは、簡易保険や年金等の公的資金が
投入されているからである。国民宿舎は、公営と民営の両方があり、施設やサービスにもかなりの幅がある。
上位2者に負けないところもあるが、平均的にはワンランク下がるようだ。
上位2者の間には、どの面でもほとんど差はない。
次に注目したいのは公共の宿である。これは、地方自治体が健康、福祉、交通施設等の
様々な名目で国から補助金を受けて建設された建物内に併設されている宿泊施設である。
広い温泉施設や高級な雰囲気のあるレストランもあって、先の上位2者に負けない宿も多い。
それでいて宿泊料金は2割ぐらい安く、これらの宿こそが一番の穴場で最も割安感のある宿といってよい。
またユースホステル(YH)は、青少年や少女が安全な旅ができる宿を低廉な価格で提供するという設立趣旨から一番安価の料金になっているのは当然である。 筆者も若いころによく利用したもので懐かしく感じた。 しかしどこの宿も、若者の姿は少なく中高年の客が目立った。 豊かな時代に育った若者は、低廉な価格というだけでは魅力を感じず、見知らぬ客と同室というのにも抵抗感があるのかもしれない。
さて、軒数では圧倒的に多い旅館と民宿の宿泊料金は、平均値ではさほど差はない。
実際、旅館と民宿の両方を名乗る宿も多い。旅館は、最も軒数が多く歴史のある宿も多くいろんな意味で幅がある。
高級な料理を提供してくれたり、歴史を感ずる風格のあるたたずまいそれにすみずみまで気配りされたサービスの宿がある。
その一方で、経営者が高齢になって食事等のサービスができなくなって素泊まりだけという宿も結構ある。
同様なことが民宿にも言えるが、もともとが海水浴客など利用客が季節的に偏るところが多く一年中営業しているところは少ない。
通年営業の宿は、豪華な海鮮料理等を売りにしていることが多く宿泊料金も高めになっていたり驚くほど低廉な料金であったりする。
ややこしいのはホテルである。 ホテルは、食事が別料金になっているのが原則である。しかし、ホテル内や近くに食事処がない場合は、最初から食事付きになっていたりする。 また、朝食だけは付けるというところもある。 その逆で、朝食にパンやおにぎりの軽食を無料でサービスするところが多くなっている。
ではその割合をグラフ「ホテル食事サービス別割合」で見てみる。
素泊まり(宿泊のみで、食事はないか別料金)以外の宿は、それぞれが30%程の三つ巴になっている。
では、食事サービスによる料金の違いをみてみると、グラフ「ホテル料金・食事サービス別比較」のとおりである。
2食付きは、地方のビジネスホテルに多い。朝食サービスは、大都会のビジネスホテルで、朝食のみは中間のビジネスホテルに多い。
素泊まりは、主にシテイホテルといわれる他に比べ高級感のある都会のホテルである。
グラフからわかるように、旅館、民宿、ホテル(2食付き、朝食付)が6千円台の平均宿泊料金で競い合っている中で、5千円台の 朝食サービス付ホテルは魅力的である。ビジネスホテルは、この朝食サービス付きというのが主流になっていく傾向にある。