民宿は、もともとは民家の一部を開放して宿泊施設としたものである。
そしてそれは、あくまで副業であったり季節の一時期に限定した営業であった。
戦後60年のそのときには、各家庭で車が1~2台あるのも普通となり、それまで交通僻地とされていたところに誰でも気軽に車で行けるようになった。
そのため、海水浴、釣り、サーフィン、海鮮料理、温泉、山菜料理・森林浴、スキー等々の地元の自然資源を活用して宿泊客を呼び込む民宿が全国的に拡がっている。
宿泊施設も、自宅とは別に、はじめから大勢の宿泊客用に建てられたものもある。
また、大抵の民宿は季節限定の営業が多い中、通年営業しているところもある。
つまり、民宿が旅館化し、後章で述べるように旅館の民宿化も進んで両者の区別が判然としなくなった。
それで、中には上記の写真のように民宿旅館と両方を名乗る宿泊施設も多い。
民宿の発生由来から、家庭的な雰囲気とサービス、地元の食材を生かした新鮮な料理は民宿の大きな魅力である。
歩く旅では、各地のそんな魅力を堪能する旅でもあった。
だが、少子高齢化やレジャーの多様化等により利用客が減少してきており、経営者の高齢化も目立っている。
ある海水浴場に近い民宿の女将さんが「民宿の時代は終わりました」とふと漏らした言葉が印象的だった。