日本一周てくてく紀行

No.114 山陰 編(下関市豊浦室津下~福岡県北九州市小倉北区)

いよいよ今日は、本州最西端のまち、そして海峡のまちでもある下関市中心市街地に入る。
空は濃いグレイの雲に覆われているけど、遠くには明るい雲間も見える。
風も強いが、天気は良くなりそうだ。
「ヴィラむろつ」の周辺をカメラにおさめ元気に出発。
近くの原っぱで強風の中、7人ばかりのお年寄りが、ゲートボールに興じている。
昨日来た道を戻って、国道191号に出る。
国道に出て直ぐに、黒井郵便局があり旅費の補充に立ち寄る。

国道はJR山陰本線と並行して低い山間の道を行く。
ちっぽけな駅舎があり、近づくと「梅ヶ峠駅」とある。
駅名がなければ、峠と気付かない山道だ。
吉見と云う所からは海岸沿いの道。
そして徐々に沿道は、都会的な風景になる。
ここでもパチンコ店が羽振りがよさそう。
安岡というところで昼時になり、昼食はラーメンセット(700円)にする。

下関の市街地に入ってから、JR下関駅のある中心部までは長かった。
下関のまちは、思っていた以上に大きな都会だ。
金比羅と云う交差点辺りからは、さらに幅の広い都会らしい道路になって続く。
そんな街並みに飽きて、一本横の路地に入る。
そこは懐かしい昭和に戻ったよう雰囲気がある。
なかでも昭和の「大衆食堂」を想わせる古い建物が眼をひく。
店の間口いっぱいに掲げられた大きな店名看板は、とうに朽ち果ててぼろぼろだ。
廃業の店かと思う客に、「どっこい、やってまっせ」とばかりに、入口に店名入りの堂々とした暖簾がかかる。
その暖簾に、店主の誇りと意地を感じてシャッターボタンを押す。

路地を抜けて国道191号に戻るとすぐに下関駅西口交差点に到る。
そこから先は国道9号になる。
鉄道のガード下をくぐって駅の東口に出る。
駅前は狭まっ苦しい感じで、デッキ広場があってそこに上がる。
周辺のビルに取り付けられた消費者金融の大きな看板ばかりが目立った。
国道9号に戻って少し行くと、右手にひときわ高いタワーが見えた。
「海峡メッセ下関」と云う所にある高さ153mの「海峡夢タワー」という。
展望室からは、地上143mのパノラマが360度一望できるともいう。
展望料金600円で上がってみることに。
たしかに素晴らしい眺めだ。
下関市街地、関門海峡、関門大橋、あの巌流島、そして対岸の門司港が、まさに手にとる様に見える。
写真は、JR下関駅、彦島方面を望んだもの。
周りを見回すと来館者は少なく、入口では休館日かと思った程。
時間が許せば、見事なサンセットや夜景も観られるのに、と残念な気持ちで降りる。

海峡夢タワーで、下関観光マップ等を収集する。
今日の宿は、そのマップに載っていた。
タワーから2km程先にある下関市役所の近くだった。

下関から対岸の門司へ行くには、鉄道、フェリーそして海底トンネルを徒歩でと3通りある。
今日はフェリーで関門海峡を渡り、九州一周後の帰りは海底トンネルを歩くことにする。

翌日、下関の朝は快晴となった。
宿を発って赤レンガ造りの旧下関英国領事館前を通り唐戸市場へ。
門司に渡るフェリー乗り場、唐戸桟橋の近くだ。
市場内は、さまざまな海産物が並べられて活況がある。
早朝のせいか、観光客より地元の人が多いようだ。
「くじらの皮スライス」と云うのもあって、ぶらぶら見て廻るのも楽しい。
約1時間ほど周辺で過ごして、9時20分発のフェリーで門司港へ。
日本の歴史上さまざまな物語が生まれた海峡を、たったの5分で渡る。

源氏と平氏が雌雄を決する戦いをした壇ノ浦の合戦。
宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の決闘。
幕末期、高杉晋作等奇兵隊の活躍。
日清戦争の講和条約締結交渉の場等。

瀬戸内海の出入口にあたるこの海峡は、まさに要綱の地。
明治以降、大陸との関係を深めて行った近代日本で、この地が隆盛を極めて行ったことは想像に難くない。

門司港に上陸し、まずはJR門司港駅へ。
いきなりレトロな建物が。
それがJR門司港駅だった。
駅舎内もレトロな雰囲気になっていて、観光案内所で観光マップ等を収集する。
下関と門司の両岸を一体にして、「関門海峡・浪漫マップ」と云うのがあった。
また「門司港レトロ お散歩マップ」もある。
こうした観光マップを片手に周辺を散策する。
たしかに明治から昭和初期にかけてと思われる建物が多く保存されている。
しかし何かチグハグな感じがする。
これだけの歴史的建造物があるのに何故か。
ロマンだけでなく、門司港の歴史を象徴するコンセプトが無いからか、と思ったりする。

それはさておき、いよいよ九州一周の旅の始まりだ。
対岸の下関のまちに向かって、目的を果たし無事に戻ってこられるよう祈った。
今日の旅は、北九州市のJR小倉駅前まで13kmの道。
のんびり行こうと、海岸沿いの国道199号を行く。
これが間違いだったようで、沿道は倉庫など港湾施設ばかり。
左の山側を見ると、車の多い道が並行するのが見える。
その道に出ると国道3号で、まもなくJR門司駅前になった。
昼少し前だけど、中華店がありそこで昼食をとる。

JR小倉駅近くの宿には、14時10分に着いた。
チェックインは16時と云うので、宿に荷物を預けて市街を散策する。
小倉のまちも想像していたよりも大都会だった。
JR小倉駅には巨大な駅ビルが建ち、そこからモノレールが出入りしている。
そのモノレールが走る平和通りを横断して小倉城を目指す。
人ごみの流れにのって進むとアーケード商店街に出会う。
今はこうした商店街は、活気を失っているところが多い。
しかしここは、凄い賑わいだ。
小倉城と城郭は、思っていたより小さかった。
しかしそのせいで、お城とまちが一体になっている感じがする。
城を囲む堀や川べりには、お城を眺めながらコーヒーを味わったりする場がある。
活気の中にそんな落ち着いた素適な雰囲気が、このまちにはあった。