昨夜の寝る前に行った、入浴とマッサージが効いたのか、よく眠れた。
眼が覚めて、部屋のカーテンを開けると、青い海がひろがっている。
すでに幾艘もの漁船が大海原に展開し、勇壮な眺めだ。
そんな気持ちの良い朝だったのに、出発からずーと急な下り坂が続いた。
だんだんと身体が重い感じになる。
それに加えて日陰が少なく、かなり汗をかき疲れやすくもなる。
土佐くろしお鉄道赤野駅で休憩をとる。
そこを発って少し行くと、くろしお鉄道線が高架構造で延々と続く。
道はその線路の上を越える。
昼時に、安芸市の市街地に入る。
昼食は何にしようか、アレコレ迷っている内に市街地を抜けてしまう。
その先には食事ができる店はなくあせる。
ようやく軽食とある喫茶店を見つけた時は、昼時を過ぎていた。
軽食のメニューは簡単な中華物しかなく、ラーメンライスを選ぶ。
今日は何組かの夫婦遍路とすれ違う。
そして写真の様なお遍路用と思われる休憩所があった。
こういう屋根付きの休憩所は、歩く旅人にとってもありがたい。
ただ、数も少なく休憩のタイミングが合うとは限らない。
この時も、この少し手前で休憩したばかりなので、写真を撮るだけで通り過ぎる。
今日の宿は、安田町唐浜にある。
国道55号から宿へ向かう道が分からず、通り過ぎたりして時間をロスする。
この宿も、お遍路宿なのか大勢のお遍路でイッパイだった。
夕食の時、ひとり歩きのおばさん遍路が隣になった。
実家が愛媛県の宇和町にあると云う。
足のマメは全然できないけど、肩が痛いと少々弱気に。
お風呂は比較的大きな浴槽で、洗い場は水道の水しか出ない。
それで、浴槽の湯で身体と頭を洗う。
また、トイレは腰を下ろす空間しかなく、前かがみになると頭がドアーに当たる。
それで、ドアーを開けて、仕上げの手仕事をするハメに。
と、ついこんな不満も出るが、ひと昔前の遍路旅に比べれば、ゼイタクというもの。
次の日、朝食はお遍路さんの出発に合わせ朝6時からと云う。
わたしもそれに合わせ、いつもより早い7時15分の出発となる。
宿から旧道を通って、国道55号に出る。
少し行くと、海岸に取り残された岩の上に、赤い鳥居と青い屋根の祠らしきものが見えた。
その岩には、一本の松が根を張り何かを感じさせる。
強い風で反りかえりながら、しっかり根を岩に喰い込ませている。
その姿は、根性と強い意志さえ感じさせる。
もしかしたら、地元の人達も同様に感じ、海への畏敬の念と合わせ、この鳥居と祠を建てたのではないか。
そんな気持ちで、カメラのシャターを切る。
今日も日の射すところでは汗をかくが、大分楽な歩きだ。
すれ違うお遍路も、一人で、夫婦で、団体でといろいろだ。
お昼時には食事処も見つかり、カツ丼(700円)を食べる。
これまで何人かのお遍路に、「室戸の吉良川のまちなみは、ぜひご覧になるといいですよ」と云われた。
まちなみには人一倍興味のあるわたしは、ぜひ観てみたいと思っていた。
それが、今日、実現した。
国道から旧道に入って行くと、見事に積み上げられた石垣が眼を引く。
これは「いしぐろ」と呼ばれ、下段は大きい石で、上段は小さい石で美しく積み上げられている。
さらに進むと、大正時代に建てられた旧郵便局の建物がある。
赤いポストの横に置かれた、〒マークの鬼瓦が興味を引く。
そして何といっても、水切瓦のある蔵や民家のまちなみだ。
白い壁にひさしのように何列か並んだ瓦が、飾りにもなって美しい。
雨水が白い壁を伝わるのを防ぐためにつくられたと云う。
こういう造りは、安芸地方の民家の特徴で、ここに来る途中でも見られた。
吉良川のまちは、明治から昭和初期にかけて、良質の木炭と薪の集積地として繁盛した。
いまの建物の多くは、この時期のものと云う。
このまちなみは、国の伝統的建造物群保存地区に指定されている。
吉良川のまちなみを楽しんで、ふたたび国道55号に出る。
小一時間程すると、道の駅「キラメッセ室戸」があった。
そこで3人の若者遍路に出会う。
バイクで日本一周したと云うAくん。
卒業してヒマができ、やってみたかったお遍路に挑戦のKさん。
わたしと同じ茨城県の笠間から来たと云うKくん。
楽しいおしゃべりの後、たくましく日焼けした3人を撮らせてもらう。
後日、この時の写真を送ると、Kさんから返事が届いた。
それによると、Kさんは44日間かけて結願できたという。
室戸で道連れになった仲間は離ればなれになり、最後は一人での結願になったそうだ。
この時の体験が、大きな財産になったとも書かれてあった。
いつもより1時間も早く出発したのに、道の駅室戸では16時近くなった。
室戸市室津の漁港近くにある宿までは、まだ5~6kmある。
それに気付いて、道の駅を急いで出発する。
室戸の市街地に入って宿までの道が分かりにくく迷う。
宿の旅館に着くと、70歳ぐらいの品の良い女将さんが出迎えてくれた。
夕食の時は話し相手にもなってくれて、近々行く関西の旅をうれしそうに話す。