朝起きると、先ずは温泉に。
程好い朝食をとって出発する。
曇り空を見上げ振り返ると、緑の段々畑の上に「かんぽの宿」の白い建物が。
今日も海岸の道、国道188号を行く。
どんよりした空で、墨絵の様な瀬戸の海と島々を眺めながら歩く。
最初の2時間程は順調だった。
田布施町の米出交差点を過ぎた頃から、右腰が痛みだした。
平生町に入ってスーパー「Maxvalu」が見え、店前の椅子で休むことにする。
腰痛は15分程の休憩で治まり出発する。
柳井市の市街地で昼時になる。
大型ショピングセンター「ゆめタウン」で「彩りちらし寿司」(428円)とお茶を買う。
店前のベンチでそれを食べていると、60歳後半と思われる男性が話しかけてきた。
わたしの歩く旅姿を見て、興味を持ったようだ。
何年か前の11月から12月にかけて、45日間で四国を一周したという。
その旅で四国巡礼48ヶ所巡りも果たしたともいう。
この旅の先には、四国一周も待っている。
その人の話を聞きながら、そのことを想う。
しかし、まだ、ずーと先で実感が湧かなかった。
昼食後、歩き始めると雨になった。
柳井港が見え、そこのフェリー待合室で休憩をとることにする。
ここから瀬戸の島々を巡るフェリー便があり、待合室は乗船を待つ人達でイッパイだ。
港の写真を撮っていると、ガードマンの制服を着た男性が話しかけてきた。
今日は良く声をかけられる日だ。
この男性も歩く旅に興味があるようで、思いがけない長話になった。
今日の予約した宿は、JR山陽本線大畠駅の近くだという。
まだ8km近くもあり先へ急ぐ。
大畠町の市街地になって旧道を進む。
かつては賑やかな通りだと思われるのに、その寂れように驚く。
日本の多くのまちが、人と同じように老いを迎えつつある、と改めて思い知る。
今日の宿は、JR大畠駅の手前の小さな漁港近くにあった。
場所を尋ねてみようと思った時、突然、三階建ての大きな建物があって、それに今日の旅館名の看板が付いていた。
宿の場所は確認できたので、JR大畠駅近くまで行って写真を撮る。
旅館は大畠瀬戸と呼ばれる狭い海峡に面していた。
対岸の周防大島に架かる大畠大橋はまじかだ。
玄関に入ると、なにやら忙しそうな雰囲気。
女将さんの話では、明日、地元の劇団の創作劇がこの旅館で上演されるという。
2階の海側で眺めの良い部屋が会場になるそうだ。
それで生憎ですが、と反対側の部屋に案内される。
部屋に荷物を置いて、周辺を散策して写真を撮る。
宿に戻って、創作劇の会場となるところへ行ってみる。
すでに6畳程の和室4部屋のふすまは取り払われている。
各部屋は、床の間の掛け軸や花瓶などはそのままに、一つになって大広間に変身。
女将さんは、創作劇の客数は20名程で小規模なものだという。
そんな手造りの様な創作劇はどんなものか、おおいに興味をそそる。
旅館のオバアチャン、女将さん、娘さんは、何となくウキウキしている。
そういえば、今日は七夕の日だ。
星は見えないけど、どんな願い事をたてようかと考える。
一昨日のことを思い出し、北朝鮮に「オチツイテ、落ち着いて」と願う。
次の日は雨だった。
今日も国道188号で、岩国まで約27kmの一本道だ。
瀬戸の海岸縁をJR山陽本線と並びながら行く。
小雨で涼しく身体は楽なはずだけど、スタミナが続かない。
このところ、夜に数回起きてグッスリ眠れないせいか。
雨の中そんなことを考えながら行くと、コンクリートの壁で囲まれた水辺に出会う。
河口のような漁港の様な不思議な場所だ。
水位がほとんどなく、小さな漁船は干上がった感じだ。
よく考えれば干潮だと分かるけど、夢を見ている様な風景だった。
そこからしばらく行くと、JR由宇駅があり待合室で休憩をとる。
鉄道と並行する道は、こうして待合室が利用できてありがたい。
次のJR通津駅を過ぎる頃昼時になる。
食事処はないけどコンビニがあり入る。
ベーコンサンド(295円)、おにぎり(168円)、牛乳を買い昼食にする。
昼食後も雨が降り続き雷も鳴る。
山陽本線の藤生駅と南岩国駅が格好の雨宿りと休憩場所になる。
雨の中、蓮のみどりが眼に滲みた。
雨にけぶる二つの大きな川を渡ると、岩国の中心市街地になった。
さすがに岩国のまちは都会的な雰囲気だ。
今日の宿となるホテルは、国道188号沿いにあった。
JR岩国駅の少し手前のシティホテルの雰囲気だ。
広いロビーを雨に濡れた身体で入って行くのは、ちょっとためらわれた。
ビジネス料金だけど、部屋のベッドは広く設備も充実している。
朝食の無料サービスもあり、いま評判の全国ビジネスホテルチエーン「東横イン」と同じだ。
この旅の体験からすると、東横インの設備やサービスがビジネスホテルの標準規格になりつつある印象だ。
夕方から、冷えたせいかお腹が張る。
夕食は中華店でラーメンだけにして晩酌を断つ。