この第3次日本一周徒歩の旅の出発地は石川県金沢市。
第2次の旅の終着地で、それを引き継いだ第3次の旅は、日本一周のゴール地、東京日本橋を目指す。
春早い3月26日に自宅からJRを乗り継いでJR金沢駅に着いた。
その日から今日7月3日は、100日目に当たる。
奇しくも今日の宿は、JR新山口駅前にある金沢で泊まった同じチエ―ンホテル。
今日は午前中はくもり。
JR宇部線と並行する国道190号を快調に進む。
ところが11時頃から雨が降り出す。
かなり強い雨で、バス停の待合所で雨宿りする。
その目の前を、女の子がずぶ濡れになりながら通り過ぎる。
気の短い現代子は、雨宿りすることを知らないのだろうか。
阿知須町のところで2度目の雨宿りをして10分程歩くと食事処があった。
昼少し前だけど、昼食にする。
親子丼セットを食べて外に出ると、雨は上がっていた。
そこからは、割と身体も軽く順調に進む。
しかし沿道の景色は単調だ。
唯一興味を引いたのは、煙突に「清酒 山頭火」と書かれた醸造所らしき建物だった。
この旅では、種田山頭火の句碑をあちこちで見た。
思わず、「山頭火の酒か」とちょっと親しみを覚える。
国道2号線の下をくぐり、さらに山陽本線を陸橋で渡る。
その山陽本線沿いを進み、新山口駅に近付くと遠くからでも、今日の宿のホテルが見えた。
しかし、ホテルは見えても線路を渡ってどう行ったらよいのか、とウロウロする。
新山口駅は、JR山陽本線、JR山口線、JR宇部線それに山陽新幹線の結節点だ。
山陽新幹線ができる以前は、小郡駅と云う名称だった。
この駅からは、鉄道を使って全国どこへでも行ける。
子供の頃から地図を眺めるのが好きだった私は、「小郡駅」にいつも眼が吸い寄せられた。
今日のホテルは、その新山口駅の新幹線口のところにあった。
このホテルは、全国どこでも朝、おにぎり等の軽食サービスが付く。
ここは、さらに夕方のカレーライスサービスもあると云う。
それではと、自販機で缶ビールを買って、それを飲みながらカレーライスをいただく。
おいしいけどお代わりはできないと云う。
食欲旺盛な旅人には、ちょっと物足りない。
それで、新幹線口と反対側の旧小郡駅へ行って、駅前の商店街を散策することに。
駅前に大きなお銚子が建てられ、それに「おごおり 種田山頭火 其中庵」の文字が見える。
この地は山頭火とどんな関わりがあるのだろうか。
駅前商店街には、何軒もの居酒屋・食事処があったけれど、入ってみたい店はなかった。
コンビニに寄って、「グリルチモンのパスタサラダ」と云うのを買ってホテルで食べる。
次の日も曇り日となり、歩くのに丁度良かった。
ホテルを出て新市街地を通り抜け国道2号に出る。
大きな川を渡ってしばらくすると、今度は山陽本線を陸橋で越える。
そこから右へ大きく曲がって、道は山陽本線と並行する。
JR四辻駅前を通り、まもなく大きな池が見えてきた。
池の中に大きな注連縄を付けた鳥居が、半分頭だけのぞかせている。
池の周辺は賑やかな雰囲気があって、交通量も多い。
この先の道は、池の水際ぎりぎりにガードレールが建ち、車道以外は50cm程の路肩しかない。
その区間が長く、車風を感じて路肩を通り抜ける間はハラハラモノだった。
長沢池と云われるその池の東の端は、小さな公園になっていた。
水生の花を愛でる木橋があり、そこから池の中心軸が見渡せる。
しばしそこで、写真を撮ったりして休憩する。
長沢池を発って1時間ほど経つと、急に雷雨となった。
丁度、防府西高校前で、その自転車駐輪場の屋根下に駆け込む。
直ぐに止むかと思ったけれど、1時間過ぎても止まない。
眼の前を、高校生の男女が仲良く相合傘で行く。
男子校で味気なかった青春が頭をよぎる。
それを振り払って、止まない雨にしびれをきらし出発する。
歩きだしてすぐに「長崎ちゃんめん」と書いた中華レストランがあった。
昼時でもあり、これ幸いとばかり店に飛び込む。
皿うどんとチャーハンのセット(960円)を食べて店を出ると、雨は上がっていた。
今日の宿は、JR防府駅近くにある。
行程が20km弱と短かったことで、その駅前には15時少し前に着いた。
駅前に種田山頭火の銅像が立っていて驚く。
その台座に書かれた説明によると、彼はここ防府市八王子で産声を上げたと云う。
昨日から山頭火のニオイ?がプンプンしたのは、それでかと納得する。
銅像の山頭火は、めがねをかけ細身の托鉢姿で立っている。
学者肌の風貌で、鋭い気迫を漂わせている。
あちこちの旅先の句碑を読んで想像した山頭火像は、骨太でズングリした豪放なイメージだった。
もっと山頭火のことを知りたいと思う。
急いで駅の観光案内所へ行き、観光パンフをもらう。
パンフに「山頭火の小径」というのが載っている。
それによると、山頭火の生家跡から彼が通った小学校への道が残っていると云う。
宿に着いて荷物を置くと、急いで「山頭火の小径」へ行ってみる。
山頭火の生家跡や「小径」は、観光名所を意識して整備されていた。
しかし、出来るだけ抑えられたさり気ない形で落ち着いた雰囲気だ。
小径の路地の中に入っていくと、懐かしいタイムスリップした感覚になった。
ところどころ家々の入口に山頭火の句が書かれた木札が架けられている。
その句を拾いながら歩くのも楽しい。
分け入っても 分け入っても 青い山
この旅でわたし自身、実感する大好きな句だ。
最初宿に着くと、宿のご夫婦は私が歩いているところを見た、といわれた。
そして、この宿に歩く旅人が泊るのは、今年は私で4人目だそうだ。
ただ、他の3人は私と反対方向の西に向かったと云う。
山頭火を慕う旅人は、この地を起点にして旅立つのかもしれない。