日本一周てくてく紀行

No.148 四国 編(倉敷市阿知~香川県坂出市本町)

いよいよ今日は、四国入りする。
昭和の終り(昭和63年)に、倉敷市児島から瀬戸の島々をつないで香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋が完成した。
それまでは、本州から四国に渡るには、フェリーか鉄道連絡船を利用するのが一般的だった。
岡山県玉野市の宇野港から香川県高松港に渡る鉄道連絡船は、宇高連絡船と呼ばれた。
私の高校修学旅行でも新婚旅行の帰りの時も、この宇高連絡船を利用した。
そんなことから、今回も宇高連絡船に乗ることにする。
ただ、鉄道は瀬戸大橋ルートになり、現在は列車が載らない一般のフェリーだ。

今日も秋晴れで、昨日より気温も低く歩きやすそう。
宇野港までの行程は、地方道が主で道が分かりにくい。
ホテルのインターネットを使って、詳しい地図をプリントする。
宿を出て、倉敷中央通りから白壁通りと、倉敷美観地区周縁を通る。
そして、倉敷川と並行する地方道22号線で南下する。
順調な足取りで、瀬戸中央自動車道をくぐり抜けたところで最初の休憩をとる。
よしずで囲われた涼しげな休憩所に引き込まれる。
よしずの内側には、オートバイの絵が描かれたプレートが何枚か張られている。
それに、どう云う訳か、「進入禁止」や「熊出没注意」と書かれたプレートまである。
いかにもドライバー達が立ち寄りそうなところだ。

やがて道はJR宇野線沿いになる。
地方道を離れて、さらに鉄道寄りの道を行く。
JR備前片岡駅前を過ぎて、鉄道を横断したところにグランドがあった。
フェンスから覗くと、灘崎中学校グランドで、「嵐を巻き起こせ灘崎魂」等と書かれた横断幕が掛けられている。
グランドでは、丁度、野球の対抗試合いが終り整列するところだ。
そこから少し行ったJR迫川駅で休憩する。
ここも無人駅で、周辺をきょろきょろしていたら、高齢の女性が話しかけてきた。
彼女はこの地の出身で児島の方に嫁いだという。
今日は用事で里帰りして、今帰るところだそうだ。
そして、近くに見える常山(307m)を指さし語ってくれた。
むかしは常山の頂上に100畳程の大広間があって、春の花見の頃は人出で埋まったという。
北は吉備平野、南は瀬戸の海が見渡せて、昔から要衝の地だったそうだ。
今は電波基地になっているのが見える。
そんな話をしてくれる彼女の写真を撮らせてもらう。
そして、もっと話を聞かせてもらおうとしたら列車が来た。
急いで列車に向かう彼女に、慌てて名前を尋ねる。
やっと、「コニシ」と云う声が聞き取れた。
お礼を言って、手を振る。

JR泊川駅を発つ頃は昼時を過ぎていた。
どこかに食事処が無いか探しながら進む。
JR常山駅前を過ぎて間もなく国道30号に出た。
その沿道に、「お好み焼き」店があり入る。
焼そば(650円)の昼食を得て、ホッと一息する。
昼食後、国道30号を30分程行くと、道の駅「みやま公園」があった。
立ち寄ると、フリーマーケットがあり、写真を撮ったりする。
ここで、宇野港へはこの国道30号でも行けるが、道は険しいと教わる。
そして、JR宇野線沿いの旧道を云った方が良いという。
教えに従い、旧道を通って宇野港に15時55分に着いた。
すると、フェリーは16時に出航するというので、慌てて切符を買い乗船する。

フェリーの甲板に上がると、涼しい風が吹いて気持ち良い。
子供二人も甲板を走り回って楽しそうだ。
この快適な船旅は1時間で、高松港に着いてしまう。
港から宿のある兵庫町への道が分からず、とりあえずJR高松駅に向かう。
駅前の広場で、若者達が路上ライブをしているのを写真に収める。
観光案内所でホテルの場所を確かめ17時40分に着く。

ホテルに着いて、明日行く坂出市の旅館に予約の電話を入れた。
すると、「お遍路さんですか?」の声。
一瞬戸惑うが、「お遍路ではないけど、四国を歩いて一周します」と答える。
この先、お遍路さんたちに混じってどんな旅になるか、とチョピリ胸が膨らんだ。

次の日の朝、起きると昨日の疲れが残ったのか、少し身体が重かった。
それでも、四国一周を開始するのだ、と気持ちを新たに出発。

今日も晴れて良い天気。
兵庫町のホテルを出て、国道30号の番町交差点を右に回る。
高松市役所前を通る地方道を行く。
やがてJR予讃線沿いの道になる。
ぽつん、ぽつんとおにぎりの様な山が見える平坦な道だ。
今では珍しい案山子も立っていて、何んとものどかな風景。
四国八十八ヶ所霊場の第八十番札所「讃岐国分寺」前になる。

白壁の長い塀に沿った道を行き境内に入る。
松林のある広い境内は、さすがに歴史の重みを感じさせる。
私がいた30分程の間に、一人で、夫婦で、おばさん二人で、さらに団体で、と大勢のお遍路さんがやって来る。
そんなお遍路さんたちの写真を撮って、休み場所を探す。
松林の中に腰を下ろすのに丁度良い石が見える。
行ってみると、そこは1260年前の創建時に建てられた七重塔の礎石だという。
礎石に座ってフト考える。
ローソク一本10円、線香一本10円一束50円、鐘突き一回百円、それに御賽銭。
次々やって来るお遍路さんたちが、この寺に日々落してゆくお金はどの位になるか。
さらに、お遍路の衣装、杖等の用具、宿泊交通費等は、四国全体でいかほどになるか。
境内で考えるには少々不謹慎ではあるが、四国霊場巡りがもたらす経済効果の大きさに驚く。
この霊場巡りを、もし誰かが意図したものなら、偉大なプロジェクトだと考えたりする。

さすがに讃岐は、うどんの本場。
沿道には、手打ちうどん店が目立つ。
昼食に、その内のひとつに入る。
うどん3玉に野菜天ぷらを皿に載せる。
セルフサービスとはいえ450円と安いしうまい。

気温は最高27度で日射しのあるところでは汗をかく。
しかし、日陰で休むと涼しく気持ちの良い気候だ。
余りの気持ち良さに、休憩時間がアッという間に過ぎる。
足のマメは順調?に育っているけど、痛みにも慣れたのか、歩いていると忘れることもある。

今日の宿があるJR坂出駅の前に着いたのは、午後4時を少し過ぎていた。
坂出駅の北側(海側)が旧来の市街地で、南側は新興市街地のようだ。
瀬戸大橋ができ瀬戸中央自動車道の完成で、人の流れが変わってしまったのだ。
坂出駅も、新興地側が正面玄関の造りになっている。
駅の観光案内所でパンフをもらい、予約した宿の場所を尋ねる。
教えられた道で、旧市街地のアーケード商店街を通る。
やはりここも、かつての活況を失いつつあるようだ。

旅館に着くと、気持ちの良い感じの女将さんが出迎えてくれる。
そして、奥座敷と云った感じの広くてきれいな部屋に案内してくれた。
夕食も美味しく、ビール代を入れても割安感のある宿泊料金だった。