日本一周てくてく紀行

No.184 東海道 編(静岡県湖西市鷲津~掛川市駅前)

昨夜で3日続けての休肝日。
夜中に一度トイレに起きただけで、よく眠れた。

今日も、小雨が降る中の出発になった。

宿前の国道301号を小一時間程行くと「新居関跡」というのがあった。
復元された関所を、小雨の国道越しに撮る。
そこから間もなく、JR東海道本線「新居町駅」に到る。
休憩をとろうと、駅舎の階段を上がる。
すると、雨こそしのげるものの冷たい風が吹き抜けるベンチで、寝袋にくるまっている人がいる。
ベンチの足もとに、バッグと靴がそろえてある。
その感じから、わたしと同じような旅人らしい。
それにしても、よくこんな場所で眠れるものと感心して写真に収める。
しばらくして、ムックリ起きあがった顔をみると、まだ幼さが顔に残る若者だ。
話しかけると、自転車で日本一周している横浜のY君だと云う。
今年高校を卒業し、この旅に出てもう五ヶ月だそうだ。
この間、親切な人の家に泊めてもらった以外は、すべて野宿だと云う。
寒そうなので、温かい缶コーヒーを勧めると、うれしそうに手に持って、いろいろ話をしてくれた。
風呂はもう何日も入っていないと云う。
それでも、肌の新陳代謝がよいのか、黒く日焼けした顔は艶がある。
荷物を盗まれたり、自転車は2台乗り潰し、転倒で荷箱や荷袋はボロボロだと云う。
それでも、苦しかった旅も終りに近づき、自分の進む道も見えてきた。
そう云ってほほ笑む顔は、すばらしい笑顔だ。
若さが、こんなに眩しく見えたことはない。
お互いに通じ合うものがあるので、短時間でも話がはずんだ。
名刺を渡し、写真を撮らせてもらう。

若者から元気をもらって、小雨の道を進む。
浜名湖に架かる西浜名橋を渡る。
横の鉄橋を新幹線の列車が駆け抜ける。
橋を渡り終えると弁天島海水浴場になる。
むかし、ここに来たことがあるが、いつ頃誰と来たかは思い出せない。
そんなことを想っている間に、JR東海道本線弁天島駅入口になる。
駅前は弁天島温泉地とかで、幾つかの大きなホテルが建ち並ぶ。
ホテル群の前の海岸はプロムナードになっていて、そこで休憩にする。
広く長いプロムナードには、小雨で人影は少なく釣り人がパラパラいるだけ。
湖に浮かぶ赤い大鳥居とその向うにみえる湾岸道路。
異質なふたつが、小雨の中で妙に響きあっている。

次のJR舞坂駅の手前、国道1号新町交差点から旧東海道に進む。
昼時になって、何を食べようか迷って歩く内に食事処がなくなってしまう。
国道257号に出て、JR高塚駅入口を過ぎたところで、ようやくハンバーガー店を見つける。
昼時は過ぎているけど、結構店内は混んでいる。
若者ばかりで少し抵抗感があるけど、思い切って入る。
テリヤキハンバーガーと豆乳チャウダーとか云うのをオーダーする。
レジで1210円と云われ、思いの外高いのにチョッと驚き。

テリヤキハンバーガーはそれなりに美味しく、気をよくして出発する。
昼食後も小雨が降り続くなか、突然、明るい配色の巨大建物が現われる。
何だろうと近づいてみると、パチンコ店だった。
今はパチンコだけでなくスロットとか云うのもあるそうだ。
いずれにしても、こうした店の威勢がこの旅で目立つ。

JR東海道新幹線浜松駅に着いて、真っ先に観光案内所に向かう。
そこで観光パンフをもらうと、そこに今日の予約したホテルが載っている。
新幹線側の駅前広場の少し先にあった。
浜松といえば「うなぎ」が有名。
夕食はそれにしようと、東海道本線側の「味の店街」へ行く。
そこで、うなぎ定食(1365円)を注文する。
やはり、お値段相応の味だった。

翌日は浜松から掛川まで30kmを超えるロングな旅になる。
それで、朝食は抜きで早めに出発するつもりだった。
それが荷づくりで手間取って7時40分になってしまう。
幸い天気が晴れて、身体も軽く元気に出発。

ホテルを発って、JR浜松駅構内を通り北側に抜けて国道152号に到る。
そこから1時間ほど行くと「牛丼の吉野家」があった。
店に入って、豚丼(330円)で朝食にする。
この値段でこの味は悪くない。
昨日昼食で食べたハンバーガーと豚丼は、同じファーストフードなのに大きな値段の差がある。
その差はどこにあるのだろうか、と考えたりする。

朝食を終えて国道152号を行くと、国道1号との複雑な立体交差点になる。
迷いながら進むと旧道に入った。
そしてそこに、日当たりのよい寺の門前がある。
「第八番札所 松林寺」とある。
静寂感が漂う心地よい空間で、しばし足を留める。

そこから程なく、天竜川の土手の道になる。
その先に、幾つものアーチを描いて天竜川を横断する橋が見えた。

その長い橋を渡ると、広々とした遠州平野。
カラッとした天気でもあり、気持ちの良いウオークに。
天竜川を越えると磐田市になる。
ここからは、「東海道」と呼ばれる道を行く。

東海道といえば、国道1号だ。
ところが、車社会の今は、たいていの市街地でバイパス道路ができ二本立てになっている。
道路標識等では、自然とバイパス道路に誘導される。
しかし、国道1号はこの分岐点が複雑な立体交差になっていることが多い。
歩行者は迷うことが多く、バイパス道路に入り込むと大変な目にあう。
歩道のない車道だけの道で、出るに出られない高架構造になっていたりする。
国道1号の名称が、両方に付いたり、バイパス道路だけで一方は別名だったりするのも迷う原因。
例えば、磐田市域は両方が国道1号で、袋井市域はバイパス道路だけに付いて、もう一方は県道になっている。
それで、東海道といえば、バイパス道路でない元の国道1号を指す。

このところの例で、昼近くになると少し眠く身体が重い感じになる。
そんなとき、袋井市の東海道「川井交差点」の所でファミレスを見つけ入る。
元気付けようと、ハンバーグステーキ(1491円)の昼食をとる。

掛川市になって、東名高速道路下を抜けると、国道1号は何本かに複雑な枝分かれをする。
迷いながら進んだ道は、旧街道風の道。
折しも日が傾き始め、この道で良いか少し不安な気持ちに。
夕陽の方向から東に進んでいるのは間違いない、とそのまま進む。
天竜浜名湖鉄道の線路を横断してまもなく東海道に出る。

東海道になって最初の交差点を右に、JR掛川駅を目指して行く。
掛川城がチラッと小さく見えて、JR掛川駅に着く。
駅舎には灯りがともり、辺りはもう薄暗い。
入口に照明で浮き上がる市内案内板があり、今日の宿も載っている。

そのホテルはステーションホテルの名が付いているけど、駅から少し離れたところにあった。
朝食サービス付きのホテルで、部屋付きの浴槽の他、屋上階に檜造りの大浴場とサウナもある。
さらに、無料のランドリー・コーヒー・新聞とサービス満点のホテルで感心する。