日本一周てくてく紀行

No.137 九州 編(行橋市中央~山口県下関市長府)

夜、何度も目が覚めた。
そのせいで、珍しく朝寝坊してしまった。
急いで部屋のカーテンを開けると、行橋のまちが眼下にあった。
天気は晴れて、JR行橋駅を中心にしたその風景は新鮮だった。
まちを俯瞰すると、地上での印象と違ったまちが見える。

いよいよ今日は小倉だと、張り切って出発。
歩き始めると、暑さと湿気がじわーと身体に滲みてくる。
コンビニを見つけて、スポーツドリンクを買い最初の休憩をする。

スポーツドリンクを飲んでも、スタミナが続かない感じで休憩が多くなる。
時間を計ると、約30分間隔だ。
昼少し前に、国道10号の「バイパス朽網」交差点のところに小さな店があった。
店の看板に、「一銭焼、焼うどん」の文字がある。
休憩場所を探していた時なので、これ幸いとばかり昼食をとることにする。
店内に入ると、お好み焼き屋と云った感じだ。
メニューの貼り紙から、焼きそばにする。

昼食後も、スタミナ切れは早かった。
JR日豊本線下曾根駅前に着いて、駅入口の階段にへたり込む。
ぼんやり駅前を眺めていると、手前の階段に女子高生が腰を下ろす。
その背中は何か思い悩んでいる様に見える。
そんな彼女の背中にそっとカメラを向ける。

そうしたら、自分の娘達のことを思い出す。
思春期を迎えると、娘達は急に父親と距離を置く様になった。
当時は、そんな娘心が全く理解できず父親の悲哀を感じるばかりだった。

そんな物思いに時間を費やしたことに気付き、慌てて腰を上げる。

小倉の街に入って、懐かしいモノレールが見えた時は嬉しかった。
先月の5月9日に下関から小倉に到着し、舞い戻った今日は6月28日だ。
丁度50日で九州を一周できた。
もっと日数がかかるかもと予想したけど、まずは順調な旅だったと云える。

今日の宿は、前回泊まった旅館にするか迷った。
何よりも今日は、九州一周できたささやかな祝宴を挙げたい。
そして、設備の良い部屋でゆっくり休みたい。
そんなことから、コインランドリーもあるホテルにした。
汗にまみれた衣類を洗濯して、すっきりした気持ちで祝宴の夜を迎えたかったから。

ホテルに着いて、予定通り洗濯、乾燥をして夜の街に出る。
九州一周の祝杯を挙げるために。
焼き鳥の店に入って、カウンターに座る。
先ずは生ビールと枝豆を頼み、さらにいい色に焼き上がる串焼きを指さす。
生ビールはグイグイと入って、次は芋焼酎にする。
いい気分になったところで、麦飯付きのニラレバー炒めを平らげる。

ホテルに戻って入浴剤を買い、寝る前に湯船に入れ浸る。
それが効いたのか、いつもより良く眠れた。

入浴剤のお陰で目覚めが良く、翌朝は元気に門司に向け出発する。
北海道一周した時、最後の日は往路と同じ道を辿った。
その時と同じで、もと来た道を辿るのは心浮き立つ。
午前中は、沿道の建物の日陰が続き涼しく身体が楽だ。
関門海峡沿いの道は、往路は海沿いの国道199号を歩いた。
復路の今回は、高台の国道3号を行く。
海峡と対岸の下関のまちが良く見えて、気分も爽快だ。
JR門司港駅までは順調で、着いた時は午前11時15分だった。
駅舎内に入って、前回と同じ休憩所で一息入れる。

  九州に渡った時は、下関市唐戸からフェリーで関門海峡を越えた。
今度は海峡下の関門トンネルを、歩いて下関へ向かうことにする。

「門司港レトロお散歩マップ」を手に持って、JR門司港駅を後にする。
マップに載る昭和の臭いが残るアーケード「栄町銀天街」を通って行くことに。
途中でレトロな感じのする喫茶店が眼に入る。
入口に「おすすめメニュー ハヤシライス」の看板とその写真が。
昼には少し早いけど入ってみることに。
店内は昭和の時代によく見かけた喫茶店の造りだ。
迷わず、コーヒー付きのハヤシライスセット(830円)をオーダーする。
出てきたハヤシライスは、レトロ風で美味しかった。

アーケード商店街の「栄町銀天街」は、まさに昭和の商店街のままといった感じ。
全国でこうした商店街は活気を失くしているけど、ここはまだまだ頑張っていて嬉しい。
さらに門司の市街地を通り抜ける。
やがて道幅が狭くなって、山裾の海辺の道になる。
ノーフォーク広場と云うところを通って、関門大橋の下をくぐる。
その先に、「関門トンネル人道入口」の看板を掲げた建物が見えた。
関門トンネルは、海底下51m、人道部延長780mだという。
トンネル内は、青白い照明で人通りも余りなかった。
トンネルを出ると、義経・知盛像や長州砲台等が海峡を見下ろしている。
関門海峡は海上交通の要所で、歴史上さまざまなドラマを生んだ、と改めて知る。

トンネルを出てからは、瀬戸内海沿いの国道9号を行く。
建物の日陰はないけれど、涼しい海風に助けられる。
それでもかなり疲れて、休憩間隔が短くなる。
紫外線の強さが影響するのだろうか。
やがて、道の右側は大きな工場が建ち並び、左側は城下町長府の街並みとなる。
国道9号は、長府の印内交差点で国道2号に接続する。

今日の宿がある下関市長府松小田本町は、そこから2Kmほど行ったところだった。
電話で尋ねてゆくと、国道から1本山側に入った旧山陽道沿いにあった。
ほとんど山陽本線長府駅の近くと云って良い場所だ。
宿に着くと、明るい気持ちの良い感じの女将さんが迎えてくれる。
そして、トイレ付の広い和室に案内してくれた。