日本一周てくてく紀行

No.48 北の大地編②(音別町~釧路市)

音別町(現釧路市)の朝は、昨日の疲れが残っていないか心配だった。
しかし意外と元気に歩き始めた。
今日の旅は、白糠町まで15km程なので気分的に楽なせいかもしれない。

音別のまちを発って、二度目の休憩をとろうと峠道の脇の草地に腰を降ろした。
すると、はるか前方に海が見えた。
久し振りの太平洋だ。
思わず立ち上がり、少し下って左記の写真を撮った。
海は気持ちを大きくし元気を与えてくれる。
道はこのまま海側に下るかと思ったがそうならなかった。
また山道になり、「M7・8パネル館」という木造の建物に出会った。
何だろうと思って中に入ってみると、平成15年十勝沖地震の記録をパネル展示している。
大変な被害状況の写真だけれど、イマイチ実感が湧かなかった。
この建物は格好の休憩場所で、その魅力の方が勝ってしまったのだ。

みどりの山肌とその上にひろがる青い空に白い雲が、なんとも楽しい。
この日は、何軒ものドライブインを見かけたけれどみな廃業になっていた。
この二つが、今日の旅でとても印象的だ。

ちょうど昼時に白糠の市街地に入った。
賑やかな建物があり、近ずくと「コーポしらぬか」というスーパーだ。
ここでチラシ弁当とコロッケを買って店内の休憩所でおいしく食べた。

今日の宿は、白糠駅の近くで明るく清潔そうな旅館だ。
午後2時前だけれど、部屋に通してくれた。
おかげで部屋でゆっくりした時間が持て、旅の疲れも抜けて行く感じだ。

早めの夕食が部屋に運ばれて、窓から夕焼けの空を見ながらの食事となった。
窓辺からの眺めに、しだいに旅をしている実感と郷愁をかき立てられる。
そして突然、明日は妻と娘それに孫の3人に会えるのだ、と云う想いが込み上げてきた。

次の日の朝、天気は曇りだった。
今日は、釧路まで30kmを超える旅だ。
それでも、釧路で家族が待っていると元気よく旅立つ。

白糠から釧路までは、右側に湾曲する海岸沿いの一本道だ。
そのため、行く手、前方右側に遠く釧路のまちが見える。
30kmもある目的地を眼で追いながらの旅は初めてである。
気持ちは、いやがうえにもはやる。
そんな気持ちを戒めるように、沿道では漁師の人たちがくつろいだ気分で魚網の手入れをしている。
10kmぐらい進んだ時、道の駅「しらぬか恋問」の大きな建物が見えた。
休憩のつもりで中に入ると、海を眺めながら食事がとれるレストランがある。
昼時には少し早いがここで昼食にする。
まだこの先20kmもあるからと、元気づけにヒレカツ定食にする。

歩いていると、釧路空港から飛び立つ飛行機が見える。
孫たちも上から見ているかもと、着陸時刻頃は時々空を見上げる。
しかし雲にさえぎられて、飛行機は見えない。

釧路の市街地に近付いた時、下校する二人の小学生が話しかけてきた。
首にかけたカメラを見て写真を撮ってと云う。
撮ってやると、うれしそうに駆けて行った。

飛行機の到着時間が大分過ぎても携帯に連絡がないので心配になる。
妻に電話しても出ないので余計に気がかりだ。

家族と一緒になるホテルの手前6km付近で、ようやく連絡がとれた。
いまチェックインしたところだと分かり安心する。
安心したせいか、それから腰痛が出始める。
それでも、いつもより早いペースで歩いてホテルに着いた。
前もって電話したので、みんなでロビーで待っていてくれた。
この旅に出た4月に2歳になったばかりの孫は、一瞬驚いた様子だったが直ぐに駆けよって来てくれた。
わずか3ヵ月の間なのに、孫が随分と口達者になったのには驚く。

釧路では家族と一緒に過ごすため、3泊することになった。

昨夜は、孫が眠くなる前にと、妻たちが見つけておいた炉端焼きの店へ行って地元料理を堪能した。
ほぼ3カ月ぶりにとる家族と一緒の食事と会話は、何よりもうれしいものだ。
出発前、孫が熱をだし、出かけるか迷って家を出るのが遅れ、あやうく飛行機に乗り遅れるところだったそうだ。
まだ少し熱のある孫は、それでも食事中みんなの周りを元気に走り回っていた。

今日はそんな孫を気遣って、できるだけホテルで過ごすことに。
またそのために、和室のあるホテルを探して午前中にそこへ移る。
昼頃にみんなで市内見学に出た。
釧路は大きな町だけれど、市街地はやはり元気がなさそうだ。
観光客もパラパラとした感じだ。
函館朝市を小型にした様な「和商市場」というところを見学して、昼食はみんなでラーメンを食べた。
本当は「釧路ラーメン」という細めんのラーメンが食べたかったけれど、そこは普通のラーメンだった。
それから本屋で孫に絵本を買ったり、JR釧路駅前でハトと遊んだりしてホテルに帰る。
夕方になって孫の熱を測ったら39度もある。
夕食は、妻と二人で駅ビルに行って弁当やおにぎりを買ってきてみんなで部屋で食べる。
孫は熱があるのに、室内を動き回ってジッとすることがなかった。

昨夜は9時半頃に寝たけれど、孫のことが気になりよく眠れなかった。
そのせいか、目覚めはいつもより1時間も遅い7時だ。
おまけにこのホテルは1泊2食付と思いこんでいたら、朝食は予約していないのでと断られてしまった。

そこで、駅ビルに行って「ミスタードーナツ」店で天津メンとギョーザ、コーヒーセット等をオーダーする。
孫は比較的食欲がありホッとした。
それからホテルに戻り、写真を撮ったりしてくつろぐ。
孫は相変わらず熱があるのに元気そうに動きまわる。
釧路空港の帰りのフライトは、14時30分という。
少し早めにといって、JR釧路駅11時15分発の空港行きのバスに乗ることになった。

そのバスを見送った後、ひとりで丸井今井百貨店のある繁華街等をぶらぶらと歩く。
この百貨店は閉店することになり、地元が存続運動を展開しているとテレビで報道していた。
日曜日の昼時に、ほとんど人通りもなく、この百貨店と周辺の商店街の存続が容易でないことは一目瞭然である。
さらに繁華街の要ともいうべき百貨店が無くなることは、地元商店街にとっては死活問題であろう。
しかし、釧路市街地手前で見た大型ショッピングセンターの進出や車社会の成熟等々による消費者動向の変化を変えるのは容易ではない。
この旅で出会った、多くのまちが遭遇している問題でもある。
百貨店近くのそば屋に入り「力そば」を注文したら、今日は切れているというので「親子そば」にした。

ホテルに戻ってひと寝入りした後、明日からの旅の再開に備えた準備をする。
それから、浴槽に入浴剤を入れゆったりと湯に浸かった。