今日は天気も晴れて、村上市肴町まで20km弱と短い旅だ。
道もJR羽越本線と日本海の間の狭い海岸線に沿う一本道。
それが気持ちの余裕となるのか、アチらコチらとカメラを向ける。
海岸沿いの狭い地域だけれど、さまざまな生活風景が見られる。
ハサ木という木組みにかけられた茶色がかった黄金の稲束。
家庭菜園のようなちいさな畑地での野菜づくり。
浜辺に並べられて出漁を待つちっぽけな漁船。
北国の写真で良く見る顔をすっぽり覆い、眼だけ見せる農婦の姿等々。
そしてまた、バス待合所では、床にシートを敷いて真向法体操する自身のポートレイトを撮ったりする。
砂浜で遊ぶ家族の写真を撮り、JR羽越本線間島駅近くで昼時になった。
折よくレストランがあり中に入る。
和食が続いて洋食が食べたい気分だったので、シーフードドリアセットをオーダーする。
出されたドリアの量が少なく、フランスパンのニンニクトーストを追加する。
それでも歩く旅人には物足りないボリュームだった。
久し振りのドリアは美味しいけれど、妻が作る方が勝るかな、とチョと思ったりする。
休み毎に真向法体操を十分にして、ゆっくりしたペースで進む。
そして、村上市の市街地へと降る峠道で、最後の休憩をとった。
道路脇の小さな駐車場の様なところにシートを敷いて腰を下ろす。
今日の目的地はもうすぐと、ホッとした気持ちで周りに目をやる。
すると、辺り一面に落ち葉が漂いハッとした。
春4月に旅立ち、いつの間にか9月末の秋になっている。
指を折りながら、過ぎし月日を数えてみる。
道中、やけにロードレース姿で自転車を駆る若者が目に付いた。
宿に着くとその訳が分かった。
明日、村上国際トライアスロン大会があるからで、この宿にも出場する何人もの若い男女が泊っていた。
夜、いつもの旅便りを家族宛にメールする。
そして、昼食で食べたドリアンは妻がつくるものの方が美味しいと思った、と付け加えた。
すぐに妻から、
ほめて貰って嬉しいです。帰ったらつくってあげるね。赤ワイン付きで。
と返信が届く。
歩く旅を続けていると、こんなたわいない話が素直にできてしまう、不思議だ。
次の日、村上市肴町の朝は雨になった。
涼しくなって、身体の方はかなり楽になったけれど、足裏や関節の痛みが消えない。
疲労骨折の心配もあり、この雨では連泊しようと考えた。
宿のご主人にその旨話すと、今日はもう満室だと云う。
少しがっかりしたけど、これも出発しろと云う天の啓示と思って気を取り直す。
雨の中、傘をさしての歩行だけれど、意外と歩みは軽かった。
今日の宿は、JR羽越本線中条駅の近くだと予約した時に教わる。
それで、道を海沿いの国道345号からJR羽越本線に沿う国道7号に切り替えることにする。
八日市と云うあたりで、国道7号に向かう地方道が分かりづらく少し道に迷う。
国道7号に出たところに、道の駅「かみはやし」があった。
ここで、雨宿りも兼ねて休憩する。
午後になると雨は上がったけれど、風が強くなる。
帽子が吹き飛ばされそうになるので、手に持って歩く。
休憩は風を避けて、パチンコ店の軒先や交差点の横断地下道でとる。
遠くでお城の様な屋根が見え、近ずくと民家だった。
1階は食事処のようだけれど、今は営業している気配はない。
われわれ世代あたりまでは、自分の家を持つことを、「一国一城の主になる」と云ったものだけれど・・・。
今日の宿はJR羽越本線中条駅から少し離れた市街地の中にあった。
そのたたずまいは、幕末の時代劇に出てきそうな古い旅籠風の雰囲気だ。
宿の2階正面に白地に青い上がり藤が入る大きな家紋が掲げられている。
奥行きの長い造りは、昔のままの様だ。
こういう歴史の感じられる旅館は大好きだ。
部屋のテレビは、NHKが映らず大相撲の千秋楽が観られなかったのもご愛嬌と云うもの。
夕食は旅人にとって過不足ないボリュウムで美味しかった。