今朝も温泉に浸かった。
このところロングな旅が続くけど、宿の温泉で疲れがとれ助かる。
今日もすさみ町まで29kmとロングの旅。
昨日、すさみの民宿に予約の電話をいれた。
その時、女将さんに何で来られるのかと訊かれた。
椿温泉から歩いて行くと云ったら、「きつい坂が多く大変ですよ」。
「歩けなくなったら、いつでも電話してください」。
「車で迎えに行きますから」と云ってくれた。
そのやさしい気遣いに元気をもらう。
宿を発って日置川町(現白浜町)域に入ると、険しい山道になる。
二つのトンネルを抜けると、海辺になった。
干潮時なのか、遠浅の入江でゴロゴロした岩肌が海面から顔を出している。
入り江の先の水平線に眼をやると、貨物船がひとつ、ふたつ、みっつ。
そこで小休止して先に進むと、また長い傘浦トンネルに入る。
その先から道を下ると、道の駅「志原海岸」があり休憩をとる。
道の駅を発つて小さなトンネルを二つ抜けると、日置川を渡る。
川には大きな中州があって、途中からもう1本並行する橋があってビックリ。
日置川を渡ると、また長い日置トンネルに入る。
トンネルを抜けると、国道42号は左へ大きな弧を描いて山の中へ。
ところが歩道だけは、右下に向かって下って行く。
そのまま行くと海辺になり、旧熊野街道(大辺路)に降りる。
日置伊古木の海岸で、眼の前に太平洋がひろがる。
そして右方向を見渡すと、海岸沿いの急斜面の山裾を旧熊野街道がはって行く。
こんなところを、今ほど安全でない道で熊野詣をした昔の旅人。
その苦難は、いかばかりかと身震いする。
手持ちの道路地図では、すさみ町の市街地は役場や温泉マークもあって賑やかなところと思った。
昼食は、ここでとろうと予定をたてた。
着いてみると、すさみの海岸は、ちょっとした南国リゾート地の雰囲気。
しかし、肝心の食事処が見つからない。
やっとミニコンビニ店を見つけ、カレー弁当にサンドウイッチとお茶を買う。
それを持って、海水浴場として整備された海辺の東屋に腰を下ろす。
そこからの眺めは美しいが、誰もいない海辺はやはり淋しい。
昼食後も、リアス式海岸の険しい道が続く。
途中に道の駅「イノブータンランド」があり寄ってみる。
ずいぶんと変な名前だと思ったら、この地はイノシシとブタを組み合わせた「イノブタ」が生まれたところだと云う。
それとブータン王国を組み合わせた名称で、道の駅のコンセプトでもある様だ。
情報・休憩室と云うのがあり、そこで少し長めの休息をとる。
すさみの国道42号沿いは、海と山の自然に恵まれている。
多くの入り江や漁港、それに峠道から谷筋に沿って海を見下ろす眺め。
そんな変化に富む風景は、大いに旅人の眼を楽しませてくれる。
その一方、幾重にも重なった地層がグニャグニャと曲げられた岩肌。
異常気象時、交通を規制する国道のゲート。
そんな何かを象徴する様な廃墟となった砕跡工場跡。
そうした諸々は、この地は厳しい環境であることも教えてくれる。
今日の宿は、すさみ町江住と云う所にある。
近くになって宿に電話し、教えられるまま進み高架道路の歩道から下をみる。
すると民家の前に立って、民宿の看板を指さす女将さんがいた。
宿に着くと女将さんは元気な声で、まずはお風呂をどうぞと云う。
お風呂は入浴剤入りで心地よく、すっかりイイ気分に。
一事が万事で、女将さんの気遣いはぬかりない。
おまけに、そのはちきれそうな明るいパワーに、疲れも吹き飛ぶ。
次の日、朝食の時に同宿の男性と一緒だった。
京都市の濱田さんと云って商用の旅だと云う。
自然と話を交わし、名刺交換して写真も撮り合う。
食事の世話をする女将さんも加わって、3人でよもやま話になった。
この宿は釣り宿だったけど、昨年ご主人が亡くなって渡船業ができなくなった。
それで女将さん一人で民宿をすることになったと云う。
宿探しで苦労する私がここに泊れたのは、こんな事情のお陰だったと思い知る。
そんな悲しみを胸に収め、二人の子供のために懸命に働く女将さんには頭が下がった。
今日は一日雨の予報。
宿を出る時、女将さんがビニール傘を渡してくれた。
どこまでも、気遣いしてくれる人だった。
今日は串本町まで約24kmの旅。
小雨が降ったり止んだり、時に強く降る天気。
昨日と同じリアス式海岸沿いを行く道。
強風注意報も出ているけど、身体があおられるほどではない。
星野海岸では、閉まっている喫茶店の前庭にテーブルとイスがあって、そこで休憩する。
雨に濡れる道路を眺め、この先の道中が思いやられた。
さいわい強い雨の時は、JR紀勢本線和深駅の駅舎やドライブインで雨宿りできた。
ドライブインは大きな店で、お昼にはちょっと早いけど、ここで昼食をとることに。
ミートスパゲテイ(600円)があり、洋食は珍しいのでそれにする。
昼食後、小雨の中を1時間ほど先に進み休憩場所を探す。
運よく鉄道駅が見えて近ずくとJR田並駅だった。
休んでしばらくすると雨が止み、駅舎やプラットホームを写真に収める。
JR田並駅を発って1時間ほど過ぎると激しい雨になった。
この時も運よく串本海中公園の近くで、公園のレストランに飛び込む。
レストランの中は結構混んでいて、席を探しコーヒー(300円)を飲みながら雨宿りする。
心配した雨の道中は、こんな具合で思いのほか順調だ。
ところが、潮岬の首根っこを横断し、岬の東側になると状況は一変した。
ものすごい強風で、先に進むのがやっとのこと。
幸いなことに、予約した今日の宿は、町役場の近くにあってすぐに見つかる。
おまけに、このビジネスホテルは、天然温泉の浴場付きだった。
雨の大変な日だったけど、とても幸運に恵まれた気がする一日だった。