今日は一日中雨の予報。
宿を出る時は雨が止んだので、出来るだけ先へと急ぐ。
梅雨時の水田は、みずみずしい緑で眼に滲みる。
その水田に数羽のシラサギが降り立つ。
そんな風景を眺めながら、国道2号を道なりに進む。
その内に何か変だと気付く。
自動車専用道路の様な高架の道になって、どこまでも続いている。
最近全国で多く建設されている国道のバイパス道路に進んだ様だ。
バイパス道路は実質は自動車専用の道路構造で、歩道がないことが多い。
国道2号沿いは、街並みがあって飲み物の自販機がアチコチにあると予想していた。
だから飲み水の用意もなく、のどの渇きを覚えても、休もうと思っても、高架道路の沿道には何もない。
やがて、キャスター付きのスポーツバッグを引きながら歩く若者に追いつく。
若者も飲み水の補給や休憩するところがなく困っているようだ。
若者は疲れた様子で、「この道は広島方面でよいか?」と聞く。
わたしは、「そうだけど、この道はバイパス道路で、旧国道は遠くあちらに見える家並みの方」と指さす。
指差したものの、ここから旧国道に行くルートが見えない。
このまま突き進むしかないと腹を決める。
彼の遅いペースに合わせる余裕がなく、先行することにする。
木屋川を渡ってしばらく行くと、側道があって交差する県道につながった。
県道に下り道路沿いに荷物を置いて、急いで自販機を探す。
約300m程先の集落の中に自由市場の様な所があり、そこにスポーツドリンクが並べられていた。
飛びつく様にそれを2本買って、一気に1本を飲み干す。
残りの1本を持って、県道脇に置いた荷物のところに戻り休憩する。
そこからさらに進むと、上市交差点で国道2号は二手に分かれる。
近くに食事処があり、昼少し前だけど昼食にする。
早くも体力を消耗したので、カツ丼で気合を入れることに。
上市交差点からは、海沿いの国道190号を行く。
途中の坂道で反対側を、ローラーボードにバッグと足を載せ滑降して行く若者がいた。
そうかと思えば、自転車で旅する中年の男性ともすれ違う。
どちらも、すれ違いで話しすることもなかった。
しかし、旅する仲間が増えてきた気がしてうれしくなる。
幸い天気はずーと曇りが続いた。
小野田市の中心市街地に入って間もないところで、とうとう大粒の雨が降り出した。
丁度沿道にうどん店の広い軒下が見つかり、そこに座り込む。
時間は15時少し前で、今日の宿はここから2Km程先のJR小野田駅近く。
その旅館のチェックインは16時と云われている。
時間待ちを兼ねてゆっくり雨宿りと決め込む。
大きな雨粒が落ちる道路の反対側に、堂々たる3階建てのビルが立っている。
何の建物かと良く観ると、パチンコ店だ。
バブル景気以降、長い不況にあえぐ日本で、全国どこでもパチンコ店の活況が際立つ。
約30分程経っても雨は降り止まない。
しびれを切らして出発することにする。
宿の旅館には、15時55分に着いた。
女将さんが出て来て、「雨の中、大変でしたね」と部屋へ。
そして直ぐに風呂の用意をしてくれる。
その明るい気持ちの良い応対に気も緩む。
思わず、ここに連泊しようかと考える。
このところ梅雨とはいえ、歩けないほどの雨にあわず順調に来ている。
こういう流れは変えたくないので、連泊するのは考えものだ。
しかし身体の疲れも溜まっていて、左足首も少し痛めているようだ。
ここは無理をせず、連泊して12日振りの休養をとることにする。
次の日は、月が変わり7月に入った。
その初日は、予定通り連泊して休養日にする。
朝食は、いつもとほぼ同じ7時半にとる。
歯を磨いて床で横になると直ぐに眠る。
メールの着信音で目が覚める。
時間は11時で、友人の奥村君からのメールだ。
中国茶の研修で中国へ行ってきたとある。
定年退職後それぞれ新しい道を見つけ、互いに刺激しあえるのがうれしい。
朝方まで強く降っていた雨は止み、それ以後はずーと曇りだ。
そして、明日はまた一日中雨で、しかも結構強い雨になる予報。
今日、休養したことがちょっと悔やまれる。
気を取り直して、昼食を兼ねて散歩に出かける。
近くのJR小野田駅周辺をぶらぶらする。
JR山陽本線とJR小野田線の結節駅であるのに、駅及び周辺は予想してた程の活況がない。
駅前の食堂店で、昼食に焼そばを食べる。
宿に戻って、また眠る。
梅雨に入って蒸し暑く、宿ではクーラーをかけることが多い。
しかし、身体がクーラーに馴染まず夜の睡眠が充分にとれない。
休養日の今日は、ひたすら眠ることに。
休養した次の朝は、雨も止みくもりの天気。
おまけに涼しい風も吹いて、絶好のウオーク日和となる。
しかし、予定していた阿知須町では宿の予約がとれなかった。
やっと予約できたのは、ずーと手前の宇部市東新川町のホテルだった。
それで今日の旅は、僅か11km程と短くなる。
今日も国道190号を行く。
宿を出て30分程で、国道はJR小野田線を越える。
その陸橋の上から、JR南中川駅方面のまちをカメラに収める。
宇部市域に入ると、お決まりの見慣れた新市街地風景になる。
さらに行くと、川幅の広い厚東川を渡る。
厚東川新橋で、直ぐ横には旧橋なのか中途半端な形で残っている。
休養明けで身体も軽く、天候にも恵まれ快調に歩く。
今日の宿となるホテル前には、昼頃に着いてしまった。
ホテルの隣に焼肉店があり、ここで昼食をとることにする。
焼肉ランチ(1050円)をゆっくりとお腹におさめる。
チェックインにはまだ早いけど、13時少し前にホテルへ行く。
荷物だけ預けて街中を散歩するつもりで。
ところが、受付の女性は快くすぐ部屋に通してくれた。
その部屋は、ビジネスホテルとしては広めで快適だ。
さっそく、汗をかいた下着と靴下を洗濯する。
それから、W杯サッカーのイングランド対ポルトガル戦をテレビ観戦しながら眠ってしまう。
眠りから覚めると、身体がスッキリしている。
近くのコンビニへ行き、夕食に幕の内弁当、野菜サラダそれに缶ビールを買い部屋で食べる。
部屋の窓からJR東新川駅前に建ち並ぶ民家の屋根が見下ろせる。
眺めていると、不思議な感慨におちいった。
いつの間にかこのまちも歳をとってしまった、というような。
人も街も、もしかしたら国も歳をとる。
そしてある時、とつぜんにその老いに気付く。