連泊し休養明けの朝は、くもりで海は霧に包まれていた。
一日の休養では疲れがとれなかったのか、身体が何となくすっきりしない。
そんな気持ちで歩いて行くと、いきなりビックリさせられた。
大きなドライブインの屋根にのる巨大な熊である。
さすが北の大地で、やることがデカイと呆気にとられたものだ。
そこを過ぎると、平坦で単調な道が続いた。
またもや右足の付け根や右腰がつって痛み、少し引きずるように歩く。
ゆっくりとした足取りにすると痛みは消える。
特に休憩した歩き始めに発生するので、歩く前にウオーミングアップを心がける。
右側の海は霧に隠れて、左側のJR室蘭本線が唯一の慰めだった。
竹浦駅、北吉原駅そして萩野駅と三つの駅を写真に収めて行くと、もう白老駅だった。
今日は15kmほどの短い旅で、宿はこの白老駅の近くにあるはずだ。
ちょうど12時で、駅前のレストランで昼食をとることにする。
何年か前に、この近くにある「ポロトコタン」に来たことがある。
ポロトコタンは、アイヌ民族の生活文化を伝える野外博物館のあるところである。
観光バスで来たのだけれど、この駅周辺の記憶は全くなかった。
レストランで予約しておいた宿の場所を尋ねると、ここからすぐ近くだった。
宿に着いたのはまだ13時を少し過ぎたばかりだが、すぐに部屋に案内してくれた。
昭和からあるたたずまいの旅館だけれど、きれいで水廻りの設備は最新だった。
何よりありがたかったのは、洗濯機と乾燥機が用意されていたことだ。
時間もたっぷりあるので、汚れた衣類の洗濯と乾燥に精を出すことになった。
次の日もくもりで午前中は霧が出た。
白老町の中心市街地を抜けて国道36号線に入ってまもなく、美しい牧場が見えた。
競走馬の牧場らしく、緑の牧草とオレンジ色の厩舎がよくマッチしている。
牧草を食む馬も幸せそうだ。
いまいちパッとしない気分が、ここで少し元気をもらった。
午後になると、また足の付け根と右腰に痛みがでた。
少しペースを緩めると自然に治る。
しかしチョッと力が入るとギクッとくる。
それで、浜辺に下りて打ち寄せる荒々しい波を眺めて休憩する。
遠くで地元のカメラマンらしき人が、三脚を据えて写真を撮っていた。
苫小牧市の中心市街地の手前に有明町1丁目の交差点があり、苫小牧灯台と云うのがあった。
かなり大きく、灯台の上に上れるかもと思って近くまで行ってみた。
しかし、灯台は柵に囲まれて中には入れなかった。
近くにはラブホテルの様なのがあったりして落ち着かない場所で、早々にその場を離れることにした。
今日の宿は、JR苫小牧駅の近くにある中規模のシテイホテルだった。
ホテル形式だけれど、部屋は小ぎれいな和室だ。
洗面台とトイレは部屋付だけれど、浴室は共用風呂だった。
風呂は16時から入れるというので、すぐにお湯に浸って入念にストレッチをする。
自室のある3階には小さな図書室コナーがあり、マンガ「沈黙の戦艦」シリーズが揃っていた。
白老の温泉民宿やどこかのドライブインでも見かけて拾い読みしたことがあった。
核戦争に付いてのしっかりした構想にもとずいて、日本の原子力潜水艦が大活躍する物語である。
面白くて引き込まれるように読んでしまった。
おかげでこの日の洗濯や日記等の時間が亡くなって、翌日に持ち込みとなった。