今日は一日雨の予報。
特に注意報や警報は出ていないので出発する。
延岡市北浦町の宿から国道388号に戻る。
国道388号は、北浦から大きく海側を離れ山中の道になる。
風はないものの、すぐに強い雨になる。
上りの坂道が続き、車道も歩道も雨水が川の様に流れる。
それを避けながら歩いても、結局、靴も全身もずぶ濡れになる。
国道は北浦町三川内辺りになると、急に道路幅が狭くなった。
それに道路工事中のところもあって、今まで通った国道で一番整備の悪い道だ。
強い雨の中、雨宿りできそうなところもない。
ようやく、道路脇に農家があって、その玄関の軒下に転がり込む。
すると、母屋横の作業場から男性が顔を出した。
思わず立ち上がって事情を話すと、ここのご主人の様で快く雨宿りを許してくれた。
私の旅の話をして打ち解けたところで、雨宿りしている写真を撮ってもらう。
雨宿り後、大分県境に近ずくにつれ、道は険しくなる。
心細くなって地元の人にこの先の道路事情を聴く。
すると、国道388号は大分県側では、さらに道路幅が狭く急カーブも多いと云う。
蒲江方面は、市尾内と云うところから農免道路で迂回した方がよいと勧めてくれた。
その道を行くことにしたけど、道路勾配がキツイ大変な道だ。
相変わらず雨が強く降り、食事処は勿論、雨宿りする場所も見つからない。
やむなく昼食は、雨が小降りになった木の下でとることに。
宿でもらった丸パン一つにカロリーメイトと水だけの食事。
トンネルを抜けると大分県になった。
こうした雨の中では、トンネルは救いだ。
交通車両も少なく、雨に濡れる心配もなく、今日の旅で唯一ホッとできる所だった。
山道を下り、リアス式の名護屋湾にたどり着く頃、雨は止んだ。
湾の中は穏やかで、養殖風景が目立った。
名護屋湾の最奥になる浜辺で最後の休憩をとる。
そこからトンネルで山越えすると、猪串湾になる。
この湾もリアス式の狭い海だ。
静かな海面にぐるりと山容が迫り、不思議な雰囲気が漂う。
ちょっと北欧の風景の様でもあり神秘的だ。
今日の宿は、この湾の奥、佐伯市蒲江町猪ノ串と云うところにあった。
小さな漁船が集まる漁港の岸壁近くにある。
赤い屋根に白い壁の洋風の2階建てで、結構大きな民宿だ。
部屋からの漁港の眺めもよく、宿の人達も感じが良い。
食事も美味しく、よほど連泊しようかとも思った。
しかし、W杯サッカーのTV中継がある明日の宿で連泊することに。
次の日の朝は晴れた。
宿の前の港や湾内風景を撮影して出発する。
昨日来た国道388号を少し戻って、野々河内浦と云うところから地方道の山道を行く。
沿道には赤と黄色のカンナが植えられ、見事に咲き誇っている。
そこを過ぎると、キツイ上り坂が続き苦しい。
少し歩く速度を緩め、ゆっくり歩く様にするとちょっと楽になる。
名護屋トンネルを抜けると、県道37号とのT字路になった。
そこから轟峠までは、更に上り坂が続く。
轟トンネルを抜けると、今度はずーと下り坂になる。
堅田川の源流から河口までの道となった。
清流の水音を聞きながら下る緑に包まれた山道は、なんとも云えず気持ちいい。
晴れていても気温は余り上がらず、早めに休憩をとって順調に進む。
山道の沿道で三軒屋と云う先に、「おかずの店 直弁」と書いた小さな店がひとつあった。
昼少し前なので、中に入って弁当を買う。
店の片隅で、弁当を食べながら店員のおばさんと話をする。
歩いて旅をしていると知ると、その内の一人が「家に泊ってくれても良い」と云ってくれた。
「山中の民家に泊る」魅力的な誘いに大いに心が動く。
しかし、宿はもう予約してるし、ここは携帯の電波が届かないというので断念する。
その代わりと云って、お二人の写真を撮って、旅を終えたら送る約束をする。
山道をさらに下ると、堅田波越と云うところでゲートボールをしている人達に出会う。
その横で休ませてもらいながら、旅のいろいろな話をする。
今日は2度も人と話をする機会があった。
孤独な旅では、こうした会話は元気をもらえる。
道が平坦になって堅田川を渡ると、男の子二人が川で服と靴を履いたままで水遊びしている。
気持ち良さそうで、こちらも思わず飛び込みたくなる。
カメラを向けると、二人はVサインで応えてくれた。
さらに進むと視界が開け、番匠川に架かる佐伯大橋とその先に佐伯の市街地が遠望できた。
佐伯大橋を渡り、その先でもうひとつ川を渡る。
すると道路の真ん中にカシか何かの大木が立っている。
その横を通り抜けて、市街地の中を行く。
今日の宿は、日豊本線佐伯駅の近くにあると云う。
JR佐伯駅前に着いて電話で尋ねると、宿はすぐ近くの町中に会った。
次の日は、予定通りここJR佐伯駅近くの旅館に連泊することに。
連日の山越えの疲れや昨夜、遅くまでしたW杯サッカーの応援疲れ?もあり、今日は休養日にする。
朝はいつもより30分遅い7時30分に朝食をとる。
歯を磨いて横になったら、直ぐに眠ってしまう。
時々、電話の音や女将さんがお茶を持って来た声で起きる。
しかし直ぐにまた眠り、午後1時まで眠ってしまた。
かなり深い眠りだったようで、目覚め感はスッキリ晴れやかだった。
延岡のホテルに届いた後方支援物資の中に、北海道湧別町の石渡さんという方からの郵便物が入っていた。
「計呂地駅俳句ポスト作品集」と云うものが添えられていた。
廃線となった元計呂地駅で休憩した時に、私も旅の駄作を投函した記憶がある。
そうした投函された俳句を作品集にまとめ、送付していただいたのだ。
その礼状を出そうと外出する。
郵便局を探して礼状を出し、ついでにカードで旅費を引き出す。
その後、コンビニでサンドイッチと牛乳を買う。
その足で、JR佐伯駅にある観光案内所による。
そこで観光パンフをもらうと、受付の案内嬢は熱心にパンフの説明等をしてくれた。
それから、わたしの旅の話等にも興味を示して、コーヒーのサービスまでしてくれる。
それで、案内所のテーブルで先ほど買ったサンドウイッチ等を食べながら話をする。
記念にとカメラを向けると、案内嬢のKさんは気持ちよくポーズをとってくれた。
そのあと、Kさんが説明してくれた佐伯のまちを、なかまち通り、新町通り、うまいもん通りの順に散策する。
佐伯のまちは、何本もの川と港湾を持つ地方の中核都市だ。
城山と呼ばれる佐伯城跡や国木田独歩館等を巡る観光の町としても売り出しているところ。
こんな町の居酒屋でお国訛りを聞きながら、イッパイやりたいところだ。
観光マップにも、うまいもん通り・新町通りは、ほろ酔い通りとうたっている。
しかし、その通りは、まだ陽も高く人通りも少ない。
明日からの旅に備えようと、やっと誘惑のささやきを振り切る。
結局夕食は、ほか弁と缶ビールを買って宿の部屋でとることに。