日本一周てくてく紀行

No.3 房総半島編(出発地へ)

歩いて日本一周するという決心をしてからは、それが揺らぐことはなかった。
毎日の徒歩訓練で1日や2日の旅なら、何の不安もなかった。
しかし、歩いてする一人旅が、どのくらい続けられるかは、まったく予想がつかなかった。

まずは、歩いて2週間程度の旅をしてみようと考えた。
歩いて日本一周する旅の起点は、日本全国の道路の基点になっている東京日本橋と決めていた。 だから、そんな旅の候補に、真っ先に浮かんだのが房総半島の旅だった。
日本橋から房総半島の海沿いを行ってJR銚子駅までの距離は、約300km位である。
これなら、2週間程度で歩けそうであった。
それに、国民宿舎や民宿等も多く、宿の問題もなさそうだった。
「歩いて日本一周する旅」のテストと本番を兼ねた一石二鳥のプランと思われた。

ただ直前になって、出発を東京にするか銚子にするかで迷った。 なんとなく、むかしの人たちが江戸に向かった気分で、東京日本橋に到着したいという想いで銚子に決めた。

2004年10月22日(金)、午前9時に、出発地の銚子市に向かって茨城県土浦市の自宅を出た。 妻に車で千葉県境にある利根川に架かる水郷大橋まで送ってもらった。

うすぐもりの時々陽が射す天気だった。
歩いて水郷大橋を渡り、利根川の土手を通ってまずは香取神宮に向かった。
香取神宮は、下総国の一の宮で神武天皇時代に創建されたといわれる。

この由緒ある神宮に参拝するのは初めてだった。 荘厳で美しい社殿に手を合わせ、この旅の安全と成就を祈願した。
参道には、みやげもの屋や飲食店が立ちならび、客は中高年の団体客が多かった。 ちょうど昼時なので、参道入り口近くの店に入って、元気づけにカツ丼を食べった。

香取神宮から道を戻って、JR成田線の香取駅まで歩いた。 香取駅は、首都圏のJR駅には珍しい小さな無人駅でコンテナを改良して作ったような形だった。 そこから電車に乗ってJR銚子駅へむかった。

今日の宿は、JR銚子駅の近くと聞いているけれど、まだ午後3時前なので灯台のある犬吠埼まで行ってみることにした。
JR銚子駅から先は、銚子電鉄という総延長10km位の私鉄がある。 その銚子電鉄駅から犬吠埼駅までは、わずか17分で着いてしまう。

左記の写真のように、銚子電鉄駅も電車もレトロぽっくかわいらしかった。 乗客のほとんどは、小学生たちで賑やかだった。 そして、みんな定期券のようなものを持っていた。
一般的には、小学校は歩いて通学できる範囲にあると思っていたので不思議な気がした。
東京のように伝統のある有名私立校があって、金持ちの家庭が児童をそこに電車通学させているのはよく見かける。
しかし、この子どもたちは普通の小学校に通う児童にみえる。 今の日本では、小学生の時から鉄道やバスで通学することは珍しくはないのだろうか。

犬吠埼灯台は関東最東端にある。
灯台の付近は、強い風が吹いていた。 その強風にのって、太平洋の荒波が巨岩に砕け散る様は壮観だった。 灯台にのぼると、360度の素晴らしい眺めだった。 強い風で吹き飛ばされそうになりながら、太平洋と房総の山野やまちなみを見回していると、大きな気分になり勇気のようなものが出てきた。

ふたたび銚子電鉄で銚子電鉄駅に戻り、JR銚子駅から清川町の宿まで歩いた。
宿に電話して場所を尋ねながら歩いたので30分位かかった。

宿の女将さんに、「洗濯をしたい」と話したら、近くのコインランドリーを教えてくれた。
洗濯をどうするかは、歩く旅の課題だった。早速出かけて、体験してみた。
いままで、なんでも妻まかせの生活から、こうして自立の道をひとつずつ歩まなければとひそかに思った。