日本一周てくてく紀行

No.165 四国 編(香川県さぬき市志度~岡山県岡山市駅元町)

今朝宿を出る時、女将さんが「よろしかったらお弁当をどうぞ」とポリ袋を差し出してくれた。
歩く旅では、昼時に食事処が見つかるとは限らない。
だから、いつもなら喜んで頂くところ。
でも今日は、高松市の中心市街地でお昼時になる。
四国最後の食事は、そこで普段食べれないものを、と思っていた。
それで、一瞬迷ったけど、ありがたく頂くことに。

さぬき市志度町から高松市街地まで、琴電志度線がはしる。
宿を出てすぐに、その琴電志度駅前になる。
そのかわいらしい駅舎を撮って、国道11号に出る。
国道は、琴電志度線とJR高徳線の間を並行してゆく。
二つの鉄道に挟まれた沿道は賑やかだ。
JR八栗口駅付近で、岩壁を模した板を突き破って本物の赤い乗用車が顔を出している。
自動車の整備工場らしい敷地にあって、広告物の様なアート作品の様なモノ。
またまた、四国人のユーモア―に出会った想いで写真に収める。

高松市の中心市街地に入って、丸亀町のアケ―ド商店街等をブラブラ散策する。
高松中央郵便局で旅費を引き出して、高松港に向かう。
高松港のフェリー乗り場の近くに高松城跡がある。
今は玉藻公園になっていて、その西門入口のところで正午になった。
松林が生茂る公園で昼食にしようと入園(200円)する。

公園内のあずま屋で、宿の女将さんが渡してくれたお弁当をひろげて驚く。
写真で見る通りのもので、何の変哲のない弁当に見えるかもしれない。
お遍路さんもきっとそうだけど、歩く旅では荷物はできるだけ軽くしたい。
だからお弁当も軽く持ち易いものでないといけない。
その一方で、長い旅を続けるためのカロリーと栄養も欠かせない。
苦しい旅では、食事は楽しみのひと時で、食欲の出るものであってほしい。
わたしには、そうした事情を考え抜いた理想的なお弁当に思える。
お遍路向きに比較的安い宿泊料金で、夕食も前日の料理旅館に負けないおいしさだった。
そのうえ、このお弁当は無料サービスなのだ。
これは、宿の女将さんのお遍路に対する「ご接待」の気持ちが込められているのかも。

四国最後の食事で、歩く旅人にとって最高のお弁当に出会えたのも、「ご縁」というものか。

玉藻公園に午後1時15分までいて、フェリ―乗り場へ行くとすぐ25分発のに乗る。
来た時と同じように、宇野港まで1時間程の船旅は快適だった。
遠ざかる高松のまちや山々を眺めながら、36日の四国旅を振り返る。
海風が心地よく、歩かなくても進んで行く快感なのか、妙に興奮する。
それで船内を動き回って、写真を撮りまくる。
船内には浴室があって、入口に誰でも入浴して良いと書かれてある。
きっと、長距離トラックのドライバー達に喜ばれているにちがいない。
甲板に出て瀬戸の海を眺めていると、時折り大型タンカーがフェリーの前を横切る。
それもすれすれに見えて、ハラハラしてしまう。
まさに瀬戸の海は、物流の大動脈でもある、と実感する。

フェリーから降りて、宇野港近くの宿には15時に着く。
洋風のビルで、結構大きな旅館だ。
玄関で呼び鈴を押しても、携帯から電話しても、誰も出てこない。
玄関前にバッグを置いて、JR宇野駅へ行ってみる。
この鉄道は、東京まで通じている。
わたしの明日からの旅も、一路、東京日本橋へ向かう。
また新しい旅を始める想いをこめて、宇野駅の駅舎や列車を撮る。

宿の玄関に戻ってしばらくすると、宿のご主人らしき人がきて部屋に通してくれた。

次の日から、また山陽の旅が始まる。
その第一日目は、岡山市の駅元町までの旅。
宿を発って8kmほどは前に来た道。
途中の峠近くに道の駅「みやま公園」がある。
来る時はここまで長い上り坂で喘ぎながらたどり着いた。
今回はゆるい下りの道で、鼻歌が出るような快適さ。
あの日、昼食をとったお好み焼きの店もある。
そうそう、焼きそばを食べたんだ、と思い出す。

来た道を過ぎると、国道30号は北上し倉敷川を渡る。
倉敷市の美観地区で風情ある建物を映す倉敷川の下流だ。
ここでは、広く鏡面の様な川面に一羽のしらさぎが姿を映す。

どこまでも平坦で広い歩道の道が続く。
すれ違う車を気にせず歩けるのはよいけど、沿道は味気ない景観だ。
国道の里程標で岡山まで10kmと云う辺りでコンビニ店に入る。
ヨーグルトを買い、店前で休憩する。
そこから30分程行くとうどん店があり、空腹を感じ入る。
玉子丼・うどんセット(700円)にする。

笹ヶ瀬川を渡ると、沿道はにぎやかな雰囲気に。
青江という立体交差点があり、そこからは国道2号になる。
清輝橋と云うところから、路面電車がはしる。

その路面電車の線路に沿って進むとJR岡山駅の前になった。
そこから今日の予約した宿に電話すると、宿は反対の駅西口にあると云う。
教わった通りに行くと、1階は食事処の店構えで、5階建てのマンション風の建物だった。
それは本館で、隣には別館もある。
中に入ると、ホテルと旅館それぞれの長所を取り入れた造りで、なかなか良い旅館だ。
有料の洗濯機(200円)と乾燥機(100円)があるが、無料の洗濯サービスもある。
下着を洗ってもらう気恥ずかしさと時間もかかる様なので、自分で洗濯する。