日本一周てくてく紀行

No.44 北の大地編①(広尾町~中札内村)

連泊して休養明けの朝、テレビの天気予報では、帯広は最高気温が34℃と報じている。
この旅では今までのところ、せいぜい20℃前後が最高だったので、朝から緊張して出発する。
まず、広尾町のコンビニで、ポカリスエット500mlとビタミングミ、それに昼食用のおにぎり2個を買う。

休養明けで身体が軽く、午前中は順調な足取りだった。
野塚小学校のプール小屋の前で休んでいたら、先生らしい女性がトイレもどうぞと云って、場所を教えてくれた。
この旅を始める前頃から、日本でも子供への犯罪が目立ち始めた。
だから、見知らぬ旅行者は、警戒されるのではと気を配ってはいる。
こういう親切は、本当にうれしい。
そんなうれしい気分で歩き始めると、若いお母さんが子供を連れてやってくる。
思わずカメラを向けると、にっこり微笑んで立ち止まってくれた。
今日はいいことがある予感がする。

やがて、左右どちらも酪農牧場が多くなる。
牛も退屈しているのか、見知らぬ旅人が近付くと一斉に振り向いて、ジロジロとこちらを見る。
昼頃になると気温も上がり、日陰で休めるところはないかと眼で追いながら歩く。
倉庫らしい建物の入口が、日陰でコンクリートのタタキになっているのが見つかる。
シートを敷いて昼食休憩するのに格好の場所だ。
そこでおにぎりを食べ、仰向けになって休んだり、足裏をもんだりして休息する。
そんな十分に休む時間をとったのに、歩き始めて直ぐに暑さでバテ気味になる。
30分ごとに休むようになり、その30分もずいぶん長く感じられる。
そんな時、パチンコ店の駐車場に日陰で風も吹いている気持ちのよさそうな休憩場所が見つかる。
そこで休んでいると、店員の女性が冷房の効いた店内の椅子にどうぞと誘ってくれた。
願ったりの所に休めて、店員さんにお礼を行って出発する。
それからこんなこともあった。
日射がきつい道を歩いていた時に、車を止めて「帯広まで行くけど乗りませんか」と誘ってくれる人がいた。
有難かったけれど、「歩く旅をしているので」とお礼を行って辞退することに。

暑さでバテながらの一日だったけれど、こんなに多くの人から親切をいただく日も珍しい。
こうした親切は、何よりも勝って旅を続けるパワーになる。

大樹町の宿は、この日にふさわしい小さな心地よいホテルだった。

次の日の朝、テレビを点けると、この日も帯広地方は最高気温32℃の予報だ。
今日は、大樹町から中札内村まで32kmのロングな旅になる。
昨日以上に気を引き締める。
宿を出てすぐに、清流日本一の看板が立つ歴舟川を渡る。
川の水は確かに澄んでいて美しい。
しかし、水量は少なく乾いた小石の河原が目立って、厳しい暑さの予感。

今日も道の両側に酪農牧場が広がり、帯広は酪農王国と云う言葉に納得だ。
牧場は低い山の上まで続いて、そのみどりのアンジュレーションがうつくしい。
一方で、農家の佇まいも北の大地らしいゆったり感と個性があって惹きつけられる。
そんな気持ちの良い風景に目を奪われて、暑さも忘れてしばしばカメラを構えることも。

道の駅「忠類」に寄ってみると、「ナウマン象記念館」と云うのがあった。
300円の入場料を払って入ってみる。
15万年前のナウマン象の全骨化石が展示されていた。
化石の発掘写真なども展示されていたけれど、余りのんびりもできない行程なのでそこそこに出る。

道の駅「忠類」からは、日射しを避けて身体を休める場所が見つからず、歩き続けることが多くなる。

午後になると、道は一路、北西に向かう一本道になった。
それは、ずーと西日をまともに受けて歩くことになり、暑さで疲労が溜まるばかりになる。
時折り空を見上げると、帯広空港に降り立つジエット旅客機が頭上を越えて行く。
途中にある上更別小学校の校庭の木陰や更別村役場前の東屋風のベンチでは、倒れこむように仰向けになって休んだ。

道の駅「なかさつない」に着いた時は、ヘトヘトだった。
そこで少し休んで歩いて行くと、直ぐに今日の宿が道沿いに見つかりうれしかった。
宿の旅館は、新館と別館があり、電話予約した新館の玄関で声をかけても誰も出てこない。
戸惑っていると、ちょうど家の人が来て、今は別館だけと云ってそちらに案内された。
別館は、結構大きな建物ですでに大勢の宿泊客がいた。
時刻は、午後6時を過ぎていて、すぐに風呂に続いて夕食となり慌ただしかった。