日本一周てくてく紀行

No.54 北の大地編②(佐呂間町富武士~紋別市)

今日も晴れで暑くなりそうだ。
旅程も26km程のロングになるので、朝早めに出発する。
沿道は、緑の山野がどこまでも続く。
ときどき牧草地があって、刈られた牧草がロールケーキの様にまかれて、点々と転がっている風景は北の大地らしい。
手持ちの飲み水も少なくなって、暑さでバテ気味になる頃に計呂地という小さなまちに入った。

そこに、計呂地交通公園というのがあり休憩することにする。
どうやらここは、旧国鉄湧網線計呂地駅の跡地を交通公園に造り変えたものだ。
蒸気機関車と懐かしい木造のボックス席のある客車1両が展示公開されている。
能取湖沿いの卯原内にも同様の交通公園があり、やはり蒸気機関車があった。

また、駅員室や線路の切換機それに線路点検用のトロッコ等も保存されている。
昭和世代には懐かしいものばかりで、あちらこちら見て廻る。
その時、ホームへ行く階段のところに俳句ポストと書かれた小さな箱が目に付いた。
近くにテーブルがあって、計呂地の感想を自由に俳句にしてこのポストに投函してくださいとの説明書きがある。
俳句用紙も置かれているので、思い付くまま書いて投函する。

計呂地を出てしばらく行くと、道の駅「愛ランド湧別」があった。
予定では、ここでおにぎり等の弁当を買うつもりだった。
ところが、そういう売店はなくレストランがあった。
この先には、食事処はなさそうなのでだいぶ早いがここで昼食をとることにする。
カツカレー(800円)を食べ、裏手の丘陵の芝生地でオホーツクの海を眺めてしばし休む。

午後は徐々に疲れてのどの渇きに苦労する。
交通公園で補給した水道水は、余り使われていなかったようで、生ぬるく気持ちが悪い気がして捨ててしまった。

今日の宿は、湧別町の公共の宿だ。
部屋もきれいでよかったけれど、いざ食事となってビールを頼んだら、ここはビールはないという。
食堂のガラスケースには、ビールがイッパイ入っている。
そういうと、これは宴会用で宿泊客には出せないという。
飲みたい人は、近くのセブンイレブンで買ってきてくれとも言われる。
のどの渇きに耐えて宿に着き、風呂に入り浴衣姿になって、それはないでしょうである。
決まりだそうで仕方なく部屋に戻って着替えをして、ビールを買ってきた。

昨日も今日も宿泊客はわたしだけで、一人さびしく食事をしていると宿の主人が話しかけてきた。
昨日、同じように歩いて旅をしている人が泊ったという。
田崎さんではというと、やはりそうだった。
浜佐呂間から一気にここまで来られたようだ。
宿の主人は、田崎さんはこの旅をするため奥さんの説得に1年かかったそうだと話してくれた。

次の日も、30kmを超えるロングな旅で気合を入れて出発する。
昨夕、ビールを買ったコンビニで、昼食用のおにぎり2個と飲み水を買う。

沿道は昨日と同じような牧草地とサイロの建物が目についた。
今日の天気予報は曇りだったけれど、14時頃まで小雨が降り続いた。
しかも、雷鳴が轟き落ちてきそうで気味悪かった。
疲れがだんだんと強くなり、黒飴をしゃぶって何とか元気づけたりする。

さいわいにも、休憩したい時にタイミングよくバス待合所が見つかった。
小さいけれど鉄道の待合所の様で腰掛けに座布団も敷いてあり、休むのにうってつけだ。
心配した腰痛はでないけれど、疲れはひどかった。
昨夜、トイレに起きてしばらく眠れず熟睡できなかったせいもある。
それに、昼食がおにぎり2個では足りないのかも知れない。

紋別オホーツク空港前を通り、紋別の市街地に入るあたりで宿に電話し道順を尋ねる。
それに従って、国道から離れて海岸に沿う道を行く。
ところが、行けども行けども教わった目印の建物が見えてこない。
再度電話すると、海岸に平行する道路が2本あるうち、低いほうの海岸べりの道を選んだためと分かった。
実際はそれほどでもなかったかもしれないが、疲れていたのでひどくロスしてしまった気がした。

宿に着くと、女将さんが今日は日曜日なので夕食はないという。
でも、近くに飲食店は沢山ありますからと、笑顔で教えてくれる。
ひと風呂浴びて、さっそく出かけた。
宿を出るとすぐに、沢山の飲食店が建ち並ぶ「2番町はまなす通り」があった。
何を食べようかと迷った末、結局、中華店に入った。
野菜炒め、餃子、ライスそれに生ビールを注文する。
ボリュームたっぷりの野菜炒めを夢中になって食べていると、テレビのサザエさんの歌が聞こえてきた。
オホーツクの港町で野菜炒めを食べながら、サザエさんの歌をひとり聞く。
何ともおかしな気分になって、ちょっぴり郷愁に浸ることになった。

今日は朝から雨と雷が鳴った。
ぎりぎりまで様子を見て、あまやどり休息日にした。
小清水町で休養日をとって1週間が過ぎており、こんな日はあっさりと連泊と決めてもよさそうだ。
そうならないのは、心のどこかに、できたら出発したいとはやる思いがあるからか。

連泊を決めると、今日は「旅人の休息日」のテーマで、自分自身の一日を写真におさめてみようと思った。
朝起きたところから、真向法体操、歯磨き、洗濯などをする姿等を、簡易三脚で撮ってみる。
一人で自分を撮るのは、フレミングが思うようにいかない。
それに、自分の姿を写真に撮るのは気恥ずかしい。

昼頃になると雨が上がり、予想外の晴天になり市街地の散策に出かける。
まずは昼食、とばかりにそば屋に入る。
店内は品の良い内装で、店の人も感じがよい。
かき揚げそばセット(900円)を食べた。
店を出るとき、紋別町のガイドマップを手渡してくれた。
それを見て、市街地の小高い丘にある「流氷展望台」に上がってみた。
少し暑かったが、誰もいない丘からの眺めは素晴らしかった。
青い空に白い雲が湧きあがり、紋別の市街地とオホーツクの紺碧の海が見渡せる。
この眺めを得られただけでも、紋別に連泊したかいがあったと思った。

そこから、ブラブラ下って紋別漁港や市街地を散策した。

宿に帰ると、女将さんが夕食に毛ガニ1杯をサービスしてくれた。
このカニは、「月夜の蟹」でなくよかった。
さらに女将さんは、食事の話し相手にもなって、紋別町やご夫婦等のよもやま話をしてくれた。