今日も晴れた。
昨日に続く30kmを超えるロングな旅になるので、出発を7時半と早める。
今日も国道11号を行くと、沿道は大きな工場が目立ってきた。
その内のひとつは、巨大な金属の複雑な造形物だ。
まじかに見ると迫力があり、引き寄せられるようにカメラを向ける。
そんな余裕も、まもなく消えた。
疲れと胃腸の荒れからか、昨日に続いて腹が張って来た。
しかもそれは下痢気味の予感。
急いでコンビニを見つけトイレに飛び込む。
間一髪間に合ったかに見えたけど、少しパンツが濡れた。
コンビニの狭いトイレでは、パンツを取り替えることは無理だ。
仕方なく歩き始めても、気持ちが悪い。
何とかしたいと思いながら行くと、ファミリーマートがみえた。
そこのコンビニには、なんと身障者用のトイレがあった。
その中は広く着替えが容易で、手洗いも付いていて、汚れたパンツも洗うことができた。
コンビニに身障者用のトイレがあるのは、めったに見かけない。
そのまれなものに、この重大な局面?でめぐり会えるとは!
ツイテると云うより、やはりこの旅は何かに守られていると感じてしまう。
今日も昼近くになると、気温が27度にもなり紫外線も強くなる。
沿道の資材館で麦わら帽子(493円)を買う。
これをかぶると、気持ち良くピッチも上がった。
JR伊予土居駅近くで昼時になり、食堂店に入る。
下痢症状だったのに、お腹はスッキリして野菜炒め定食(800円)をおいしくいただく。
昼食後、やがて沿道は、たわわに実った稲田がひろがる風景になる。
黄金の稲穂を囲む緑のあぜ道に、真っ赤な彼岸花が隊列を組む。
その光景に目を見張り、しばし夢中になってカメラを向ける。
旅は良いことがあれば、悪いこともある。
こんどは、このところおとなしかった足のマメが、悲鳴をあげる。
休憩して歩き始める時の痛みは最悪。
のどが渇いても、冷たいものを避けて温かい飲み物にする。
休憩するたびに、ストレッチをして体調を整える。
今日の宿は、JR新居浜駅の近くにあるという。
その新居浜駅は、国道11号から1km以上離れたところにある。
新居浜駅に向かう国道11号の東城交差点のところで、最後の休憩をとる。
スタミナを心配しながら行くと、宿はスンナリ見つかった。
駅前広場に近い4階建てのビジネスホテルだ。
コインランドリーもある長期宿泊者が多そうなホテル。
部屋付きの浴室のほかに、共用の大浴場もある。
朝夕においしい食事も付いて大満足の宿だった。
次の日は久し振りの曇り日になった。
日射しが弱く、ホッとする。
しかし、30kmを超える旅が続き、出発の時から身体と足が重い。
そんな気分の時、自転車に乗った70歳ぐらいの男性から声をかけられる。
最初は私の旅の話から、直ぐに自分の交通事故の話になった。
そして、結局は病院の通院費を貸してくれという。
その浅ましさに、嫌な気分になって早々に去ることに。
そんな気分を変えてくれたのは、沿道の風景だった。
人の顔の様なユーモラスな土蔵や、シャレたデザインの民家等など。
讃岐街道と呼ばれる国道11号沿いは、コンビニが多い。
お遍路たちが良く利用することもあるからだろうか。
歩く旅人にとってもありがたい。
休憩は、そのコンビニ店の前のタタキに腰を下ろす。
食事処もいろいろあるけれど、昼食はやはりうどん店にする。
JR伊予西条駅付近の食堂店に入る。
好みの品をお盆トレ―にとるセルフの店だ。
かやくうどん、ごぼうの天ぷら、冷やっこ、オカラで〆て580円。
西条市には八十八霊場札所寺が4寺ある。
その内の第63番札所吉祥寺による。
椎の木なのか大きな大木が、境内をおおっていたりして涼しい。
狭い境内に鐘楼や石仏それに低木等があり、お遍路たちはその間を動き回る。
次に寄ったのは、第62番札所宝寿寺。
JR伊予小松駅のすぐ近くにある。
ここも大きな寺ではないが、屋根に炎を燃やした立派な宝珠がのっている。
夫婦と思われる男女が、傾きかけた陽を背中に浴びて、熱心にお経を読んでいる。
そしてフトきれいな花が眼にとまった。
少し暗い雰囲気の境内で、みずみずしい色香を放っている。
芙蓉の花だった。
芙蓉の花ことばは、「しとやかな恋人」。
この境内には、不適格のような、そうでもない様な。
今日の宿は、その寺の近くにあった。
まさに巡礼宿と云うべき、ビジネス旅館だ。
中に入ると、四国八十八霊場の全寺の写真が飾ってある。
夕食の時、男性二人とおばさん二人組と一緒のテーブルになった。
この4人は、巡礼の道でたびたび顔を合わせ知り合いのようだ。
おばさんの一人は、日本百名山を登破し、こんどは四国八十八霊場巡りに挑戦中だという。
また男性で茨城の寺の副住職と云う人もいた。
私の家の近くのことも良く知っていて驚く。
その副住職の人は、何度も四国巡礼をしているという。
八十八霊場の札所寺は、年収が2~3億円以上だと話してくれる。
「さもありなん」と相づちを打ったりして、会話が大いに盛りあがる。
この宿は別のところで肉屋さんもしているとかで、夕食は肉料理が中心だった。