日本一周てくてく紀行

No.47 北の大地編②(豊頃町~音別町)

豊頃町の宿は、茂岩山自然公園の山の上にある。
朝起きた時、身体が硬く疲労が溜まっているようだ。
珍しく朝食に食欲が出ず、無理して食べる感じだ。
それでも、今日は浦幌町まで18km程の短い旅なので元気を出して出発。

天気も小雨模様でパッとしない。
十勝川を渡るときに下流に架かる「茂岩橋」を撮った。
この後は、身体が重く撮影の意欲など出てこない。
一時間3kmのペースで歩くのがやっとだ。
休みを多くとって、何とか腰痛だけは出ないことを願った。

そうやって、今日の宿があるJR浦幌駅前に着いた時は14時近かった。
昼食もまだだったので、駅前の店で五目ラーメンを食べる。
予約していた旅館は、駅前ですぐ見つかった。
北国の旅館らしい旧い雰囲気だけど、清潔で小ぎれいな宿だ。
宿の食事は、この旅でごちそう慣れした身には簡素に見える。
でもそれが今の私にはホッとする、程良いものだ。

明日に予定していた音別町の宿は満室だという。
困って電話帳を調べて、明後日なら部屋が空くという民宿が見つかり予約がとれた。
それで、ここ浦幌町の旅館に連泊することに。

「空き部屋待機日」となった今日は、格好の休養日になった。
広尾町の宿で休養日をとってまだ1週間も経っていない。
これは、疲労が溜まって無理をするなと云う、神の思し召しかと思う。
それで、休養日のいつものメニューを着実にこなす。
つまり、いつもと同じ時間に起き、ストレッチをして朝食をとる。
そのあと、洗濯をしてからもうひと眠りするである。

昼になって、昼食を兼ねて街中の散策に出る。
浦幌駅前の市街地は、町の規模の割にはきれいに整備され、ちょっと洒落た店も多い。
そんな店のそば屋に入ってみる。
店のおススメ「割子そば」(1050円)を注文する。
茶そば、天ぷら、トロロ、おろし、鶏肉汁のセットだ。
店を出て、いろいろ調べ物をしようと町の図書館へ行く。

ところが図書館は休館日で、帰る途中に雨になった。
しかも、強い夕立ちで運よく見つかった喫茶店に飛び込んだ。
北の大地の小さな町には珍しい本格派の喫茶店だ。
コーヒーが美味しく、その味をかみしめながら雨の路上をぼんやり眺める。
やがて北海道にいることを忘れて、「いったい自分は今何をしているのだろう?」と 夢を見ている感覚になる。
夕立ちは止むかと思えばまた降り出し、1時間以上居ただろうか。
2杯目のコーヒーをオーダーすることになった。

夕食は、今夜も普通の家庭料理を食べている感じでよかった。
旅館の食堂はテレビがなく、ラジオを流していて、それも新鮮な気がする。
食堂でひとり、そんな雰囲気で食事をしていて想い出した。
昨夜、大学生と先生らしいグループも泊り、今朝、彼らが出発するときに立ち話をした。
彼らは、「農村住宅の変遷」をテーマにした調査で、北海道一周しているという。
私も興味あるテーマなので、もっと話が聞きたかったが時間がなく残念だった。
大樹町のホテルでも、似たような学生と先生の調査グループが泊っていた。
今度そうしたグループと一緒になったら、積極的に話しかけてみようと思う。

休養明けの朝は、雨あがりの快晴となった。
飲み水に500MLのボトル1本を買い、途中でポカリスエット1本を補充するつもりで出発する。
荷物はできるだけ軽くしたいという想いからだ。
ところが、これが大誤算だった。
飲み水が尽きても、途中の山道は人家どころか何もない。
JR上厚内駅が見えた時は、ホッとした。
ところが近付いてみると、人影はなく、ましてや自動販売機もない無人駅だ。
気を取り直して行くと、今度はドライブインの看板が遠くに見えた。
必死の想いでたどり着くと、無情にもそこはとうに廃業になっていた。
この時ほど水に飢えたことはない。

干上がり寸前になった時、遠くに牧場が見えた。
近くに行くと、牧場入口から母屋まではかなりの距離である。
意を決して、重い荷物は入口に置き空のボトルだけ持って母屋まで歩く。
母屋の敷地には、牧場のトラックを運転している人がいたので飲み水のお願いをした。
その人はこころよく「うちの水はアルカリでうまいぞ」と云って、納屋の水道蛇口まで連れて行ってくれた。
たしかに、その水は飲み口も良く美味しかった。
さらに「牛乳も飲んでいけ」とミルクタンクから杓子でしぼりたての冷たい牛乳をすくって渡してくれた。
これも美味しかった。
福井牧場の人、本当にありがとうございました。

直別と云う所でライダーハウスの店が見つかり、遅い昼食に味噌ラーメンをたのむ。

今日も時々、腰痛が出て苦労する。
道は歩道もなく、脇を大型ダンプが走り一層疲れが出た。

音別町の宿は、大きな民宿で大勢の人が泊っていた。
この宿は、食事は食堂でするのだけれど、食堂での飲酒は禁止だという。
それで楽しみな晩酌は、食事後、近くの雑貨屋で缶ビールを買って来て部屋で飲むという羽目になった。
おまけに、部屋のテレビは有料で1時間100円である。
財布の300円はすぐに空になり、もう寝るしかない、であった。