日本一周てくてく紀行

No.126 九州 編(日置市伊集院町~姶良市加治木町)

今日は伊集院町から、いよいよ鹿児島市の中心まで約21kmの旅。
天気は曇りでやや蒸し暑い。
今日もJR鹿児島本線と並行する県道24号を行く。
疲れが溜まっているのか、休憩間隔が30~40分と短い。
珍しく食欲が余りわかない。
昼食は、コンビニでミックスサンドとあんぱんと牛乳を買い、それで済ます。
それでも、JR鹿児島中央駅西口前に14時に着いた。
九州新幹線の終着駅と鹿児島本線の両駅を兼ねるのに、駅前は意外と簡素な感じ。

駅舎内の観光案内所で、観光ガイドマップを収集する。
それを持って東口に出ると、まちの印象は一変する。
こちらが、鹿児島市の表玄関なのだ。
駅前には大きな「若き薩摩の群像」というモニュメントが建っている。
そして、キレイな路面電車と停留所がある。
もちろん、人出も車の交通量も多い。
今日の宿名には、鹿児島一の繁華街を示す「天文館」が付いている。
観光ガイドマップを持って、その「天文館通り」を目指す。
途中、明治維新の英雄、西郷隆盛の生誕地に寄ってみる。
しかしそこは、ただ石碑が建っているだけで、当時をしのばせるものは何もなくガッカリ。

宿は「天文館通」に近い路面電車が走る大通りに面してあった。
このホテルは、コインランドリーがあるのでズボン、ベスト等を洗濯・乾燥をする。
それから、明日以降の宿をホテルのインターネットで調べ電話予約する。
さらに今日の旅便りもメールしてから外出する。
天文館通は、さすがに人出も多くにぎやかだ。
しかし、一歩脇に入ると客足が減って、多くの店は経営が大変そうな雰囲気。
居酒屋でイッパイやるきで来たけど、何となくその気分になれず、食事だけしてホテルに帰る。

鹿児島は、大学卒業して就職までのフリータイムに友人の奥村君と来て以来の二度目。
二人で立てた沖縄旅行の途中だった。
まだ沖縄に行くのにパスポートが必要な時だった。
名古屋から鹿児島までは列車で、ここから沖縄までは船で一日がかかりだった。
この時の鹿児島は、船で錦江湾を航行したことしか覚えていない。
4月からの勤務先が、地元名古屋と思っていたら東京勤務と云う連絡が入り、上京準備のため旅行日程を短縮すことになった。
そんなこともあって、船上で友人とこれからの互いの人生を熱く語り合ったことだけが蘇る。
今思うとこの時、確かにわたしの人生航路は、大きく舵をきられたのだ。

次の日の朝、疲れが溜まった感じがして、連泊しようか迷う。
しかし天気も良く、今の旅のリズムと天気の変動があっているので出発することに。
歩き出すと意外に身体は軽く快調だった。

ホテルを出ると、前の大通りは慌ただしい一日が始まっていた。
路面電車の停留所「天文館通」では、忙しげに大勢の人が乗り降りする。
まだ2年ほど前までは、自分もこんな生活をしていたのだ。
なのに今は、別世界を観るようだ。
中町コアモールの商店街を通り、西郷さんの銅像が建つ大通りに出る。
大通りは国道10号で、この辺りは「歴史と文化の道」と観光パンフにある。
沿道には、県立博物館、市立美術館、鶴丸城跡等が続く。
南方神社で休憩して1kmほど行くと、「仙巌園」というところに到る。
ここは、錦江湾を池に桜島を築山に見立てたスケールの大きい庭園で有名だ。
入ってみようかと思ったけれど、先を急ぐ気持ちが勝った。

「仙巌園」から先は、国道10号はJR日豊本線と共に、山裾と錦江湾の間を行く。
錦江湾にそびえる桜島は、昨日、60年振りに噴煙を上げたと云う。
まさか、わたしの到着を祝ってくれたわけではないが、少し何か因縁を覚える。
その桜島を撮っていると、眼の前の海面が輪を描く。
何だろうと眼を凝らすと、イルカの群れが泳いでつくる輪だ。
TVのドキュメンタリーで、イルカが群れをつくって漁をするのを観たことがある。
それは、イルカが魚群を輪の中に囲って浅瀬に追い込み漁をするというのだ。
まさにそれにピッタリで、夢中になって写真に収める。
そこから大分先で、今度は10頭位のイルカが列を作って、ジャンプしながら泳いで行くのをみる。
こんなに交通量の多い海岸で、イルカの群れを見るのは驚きと感動モノだった。
JR日豊本線竜ヶ水駅近くで昼時になり、食事処を見つけ入る。
きつねうどんセットを注文する。

午前中は体調が良かったのに、午後は暑さでバテテくる。
休憩を30分間隔位でとる様になる。
姶良町(現姶良市)で下校途中の小学生達に出会う。
カメラを向けると、ワイワイと集まって来てポーズする。
その屈託ない笑顔に、旅の疲れをいっとき忘れる。

今日の予約した宿は、加治木町(現姶良市)の市街地を過ぎた外れにあった。
焼肉店を併設するビジネスホテルだ。
愛想の良い支配人で、話し好きだ。
しかし、浄化槽や換気の音がうるさいのに、ご本人はマヒしているのか気付かない様子。
夜、浄化槽の低周波音がうるさく眠れなかった。