日本一周てくてく紀行

No.169 山陽 編②(明石市桜町~尼崎市昭和南通)

昨晩、時々すき間風をぼんやり感じながら眠った。
朝起きて、窓のカーテンを明けると網戸になっていた。
少し寒い感じだったけど、風邪をひかなくてよかった。
それに疲れがとれたようで身体が軽い。

宿を発つと、風の強いスカットした晴れ。
今日は、いよいよ神戸だ。
ずーと前から、神戸では連泊してゆっくりしようと考えていた。
それで、もう半月ほど休養日をとらずここまで来た。
素泊まりの宿だったので、どこかでモーニングをと探しながら歩く。
その内に、雲がひろがり風が強くなる。
明石海峡大橋が見える頃には、吹き飛ばされそうな風になる。
夕方のテレビで、この風は今年の木枯らし1号と報道される。

明石海峡大橋のたもとにJR舞子駅がある。
その駅舎に喫茶店があり入る。
窓辺の席に着くと、眼の前から巨大な吊り橋が、波の荒い海峡を跨ぎ淡路島へと伸びてゆく。
モーニングのトーストセット(400円)を食べながら、その豪壮な眺めを楽しむ。

そこから国道2号は、JR山陽本線と山陽電鉄本線とくっ付く様に海岸沿いを行く。
沿道は、公園や緑地が幾つもあって、休憩場所に困ることがない。
平磯緑地そして須磨浦公園でと、十分な休憩をとり快調に進む。
JR須磨駅の前を通り過ぎ、山陽本線を渡る。
その踏切前では、すっかり晴れ上がった秋空になる。
その強い光は、あたりを一瞬にして風景の印象を変えた。

その先の須磨海浜公園の辺りで昼時になり、食事処を見つける。
スブタとラーメンの日替わり定食(650円)が、本日の昼食となる。

昼食後の道でファミレス「ガスト」のトイレを借りる。
その後、プレミアムカフェ(336円)を飲み、長めの休憩をとる。
この歩く旅では、百円ショップの県別道路地図を頼りに旅をしている。
「ガスト」を出てからだいぶ過ぎ、道路地図「兵庫県」を置き忘れたことに気づく。
この地図には、兵庫県の日本海側を歩いたルートも書き記してある。
余程引き返そうかと思ったが、その元気が出ず諦める。

神戸の市街地は、11年前の阪神淡路大震災から立ち直ったかに見える。
しかし良く見ると、鉄筋コンクリートの橋脚の一部がはがれていたり、補修の跡が生々しいのもある。
また、震災を免れた家屋と再建した家屋がモザイク状に見えたりする。
あらためて、震災の大きさを思い知らされる。

須磨海浜公園の先から、国道2号の上を高架道路がはしる。
大震災でこの高架道路が倒れた無残な写真を思い出す。
そんなことを想いながら、JR神戸駅前に着く。
そこから国道を離れ、賑やかな市街地の大通りを行く。
「海榮門」の額を掲げる中華門が見え、そこから南京街の中へ。
さらにアケ―ド商店通り「元町一番街」を抜け、JR三宮駅前に到着。
さすがに神戸は大都会で、その賑やかさは格別だ。
おまけに、早くもクリスマスムードも漂い、旅人の心に波風が立つ。

今日の宿は、ホテルに付けられた名前からJR三宮駅の近くにあるはず。
三宮駅に到着してホッとしたら、想っていたよりも駅から離れたところにあった。

夕食はどこで何を食べようか迷い、結局、近くのコンビニで弁当を買ってホテルの部屋で食べる。

次の日は、予定通り連泊し休養日にする。
休養日は、いつものように午前中はベッドでゴロゴロ過ごす。
昼になって、ホテルの近くのうどん屋に入り、うどんセット(650円)を食べる。
ホテルに戻り、旅の記録の整理等の雑用をこなす。

今日の夜は、昔の職場仲間T君とイッパイやることになっている。
午後4時半頃にホテルを出て、JR三宮駅界隈を散策する。
三宮交差点の歩道橋の上から街を眺めると、早くも冬の気配が。

何年か前に妻と神戸に来て、やはりJR三宮駅近くのホテルに泊った。
街中のレストランで夕食をとってブラブラとホテルに帰る途中で、妻の姿が見えなくなった。
どこへ行ったかと見廻すと、狭い路地から顔を出し、面白い居酒屋を見つけたと云う。
それは、5~6人も入れはイッパイの小さな日本酒専門の店だった。
店主が勧めるままに飲む酒は、それぞれ個性と味わいがあった。
さして日本酒通でもない我々夫婦も、店内の酒談議に加わって楽しいひと時を得た。
それを思い出してその店を探したが、見つけることができなかった。

それから、JR三宮駅の山の手側を散策してみる。
当てもなく歩いている内に、生田神社の境内に入る。
一千年も前からある由緒正しい神社だと云う。
度重なる被害から立ち直った神社で、「蘇る神」として崇められているそうだ。
結婚式の袴姿の男性と高島田の髪に純白の振り袖姿の花嫁が、鈴を鳴らし祈っていた。

T君とは、約束通り18時30分にJR尼崎駅の改札口で落ち合う。
いまT君は通勤に2時間近くかかり、JR尼崎駅はその通勤経路だという。
そんな話からは始って、すぐに打ち解けた会話になる。
わたしの旅の話、会社のこと、家族の事等、話題は途切れることがない。
あっという間に夜の10時近くになり、T君の通勤事情を考えお開きに。
この夜は、先輩のわたしがT君の「接待」を受けることになった。

JR尼崎駅から列車でJR三宮駅に戻り、そこからホテルのシャトルバスで帰る。

連休明けの朝、休養で疲れがとれた半面、昨夜のホロ酔いがまだ少し残る。
しかし天気は快晴で、気分良く歩き始める。
今日は、昨夜、電車で行った尼崎まで22km程の旅。
神戸から西宮にかけては、六甲の山並みと瀬戸内海に挟まれた狭い土地にまちが発展した。
JR山陽本線、阪急神戸線それに阪神本線の3本の鉄道が、並行してまちを貫ぬく。
国道2号の沿道は、中高層の建物が途切れることがない。
時折り川等でそれが途切れると、六甲の山が迫って見える。

芦屋市域になって、低層の住宅地に公園があり、そこで休憩をとる。
ベンチに腰を下ろし、すくっと立つ一本杉を見上げると、抜ける様な青空。
「秋だなー」とつぶやくと、ちょっぴり郷愁も。
空も街も山並も、みんな秋の強い光で輝いて見える。
気分も明るくなってよいのに、「こんないい天気に自分は何をしてるんだろう」という想いも。

気を取り戻すように腰を上げ、先に進むとファミレス「ロイヤルホスト」が見えた。
昼少し前だけど、吸い込まれるように店に入る。
いつもより奮発して、ドリンク付きのステーキランチ(1220円)にする。

西宮市役所近くで、白地に黒い線が入った縞模様のタクシーが見えた。
云わずと知れたプロ野球「阪神タイガース」のユニホームだ。
西宮といえば甲子園球場があり、阪神タイガースのホームグランド。
こういうタクシーがあっても、驚くことはないかもしれない。
わたしの友人の「トラキチ」は、いつも云う。
関西では、何といっても阪神タイガースで、他の在阪球団がどんなに優勝しようが関係ないと。
関東のスナック等で、たまに誰かが阪神の応援歌「六甲おろし」を歌う。
すると、店内のアチコチで、歌に合わせ小さく振る手がみえる。
タイガースファンは独特な連帯感があり、それを誇示したがるかにみえる。

武庫川大橋を渡って尼崎市に入ったところで、予約した今日の宿に電話する。
宿の場所は、「難波」という交差点を右に折れ、国道から1本目の道を進むと分かると云う。
その宿は、いわゆるピンク街ぽいところにあってちょとビックリ。
ここも素泊まりだけと云うので、夕食をとりに「一番街」というアーケード街へ行く。
まさに関西の下町的雰囲気で人通りも多くにぎやかだ。
しかも、どこまでも続く感じで、途中で引き返す。
うどん店に入り、そぼろ定食(1110円)とグラスビールで夕食にする。