函館から青森行きのフェリーで、ひとりの少年と出会った。16歳と言うその少年は、小学3年生の時に母を亡くし、今度は3年間闘病生活を送っていた父親まで喪ったと言う。それで、東京に居る82歳の祖母を頼って自転車で行くのだと言う。少年はフェリーの展望甲板で、旅人に自分と同じ孤独の臭いを感じたのか驚くほど素直に話しかけてきた。3時間40分の航海の大半を、この少年とかたりあつた。まだ少女の様な風貌が残る少年の悲運に、どんなコトバを送ってやればよいのか、旅人は戸惑うばかりでした。「お父さんは、最後に君になんて言ったの」と聞いたら、「ゴメンね」だつたそうです。思わず目がしらが熱くなってしまったのでした。