ほどよいおしめりの中、阿波入りしました。四国の霊場を参拝して巡ることを「打つ」といいます。そして、霊場の札所番号順に時計方向に回るのを「順打ち」と呼びます。その逆を「逆打ち」といいます。大抵のお遍路は、順打ちで回ります。そのため、「逆打ち」で回っている私は、毎日、多くのお遍路とすれちがいます。その時に「逆打ち」ですかとよく聞かれます。私は「いえ、お遍路ではなく、写真を撮りながら歩いて四国一周してるんです」と答えます。すると、鋭く反応する人もいますが、多くは「へぇー」と言って無表情に通り過ぎます。それで時には、「逆打ちですか」と聞かれても面倒臭くなって「えェ、まァー」と曖昧に答える事があります。そうすると「それは凄い、頑張ってください」と眼を輝かせて声援してくれるのです。「逆打ち」は、「順打ち」の三回分に相当する大変さがあるそうです。お遍路の戒のひとつに「うそをついてはいけない」というのがあります。これをもっても、旅人はお遍路にはなれないのです。